第VIII因子インヒビター測定の特性および不活化処理の有用性

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  • Methodological characteristics of Factor VIII : C inhibitor assays and the availability of inactivation treatment

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抄録

凝固第VIII因子(FVIII)に対するインヒビター測定は,Bethesda(B)法が広く用いられてきたが,低力価域における定量性が乏しいことから,近年,Nijmegen(N)法が推奨されている.インヒビター力価はBethesda単位で表わされるが,現実にはこれら2法以外の測定法も混在し,各測定法間で感度が異なることも考えられる.今回,インヒビター陰性血友病A患者血漿を対象にB法, N法,さらに,B法の変法であるS法およびM法の4法を比較検討した.S法およびM法は,患者血漿中の凝固因子を56℃で不活化処理し,S法は56℃処理FVIII欠乏血漿を,M法は56℃処理正常血漿を対照とする方法である.<br>各反応液のpH変化とFVIII:C残存率について検討した.pHは,S法,M法では加温前から高く,加温により4法全てが上昇した.また,B法の対照反応液はpH変化をほとんど認めなかったが,測定と対照反応液間で最も大きいpH差(>0.5)が観察された.一方,FVIII:Cは各法ともほぼ同様であったが,加温後のB法対照反応液のみFVIII:C残存率が90.4%と顕著に高値を示した.pHとFVIII:Cには,反応液のpHが高いとFVIII:Cが低値となる負の関係性 (r=0.878)が認められた.インヒビター陰性血友病A患者検体で実施した4法の比較では,B法は61.5%が偽陽性となり,他の3法は全て陰性で一致した.また,FVIII:Cが10%以上の4検体では,N法のインヒビター力価はより低値を示した.<br>以上の成績より,インヒビター評価においては各測定方法の特性を認識した上で解釈することが重要と考えられた.

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