HIV/AIDS 診療における地域連携の体制づくりと課題

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タイトル別名
  • Establishment of a community network among hospitals and other organizations of HIV/AIDS treatment
  • HIV AIDS シンリョウ ニ オケル チイキ レンケイ ノ タイセイズクリ ト カダイ

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抄録

目的 HIV 感染症診療に関する地域連携を目指し,神戸市近隣で拠点病院と一般医療機関におけるネットワーク連絡会を立ち上げ課題の共有を図った。また,HIV/AIDS 診療の実態把握のためアンケート調査を実施し,今後の HIV/AIDS 対策における診療体制の整備と行政の役割や連携方法を検討した。<br/>方法 1. 事例検討・学習会(対象:医療従事者,自治体職員等)2 年間で 6 回開催 2. 先進事例の視察等(東京,広島) 3. 医療機関アンケート(対象:兵庫県内353病院)調査票(自記式アンケート)を郵送し,院内感染対策委員へ回答を求めた。調査項目は,HIV 感染症の診療経験の有無,感染対策マニュアル,診療方針や条件,HIV 抗体検査等についてである。<br/>結果 1. 事例検討・学習会:HIV/AIDS について情報交換や地域の現状を共有する機会となった。診療の場では本人の治療内容以外に,家族やパートナーに関する事,治療費や仕事の相談を経験していた。2. 先進事例:拠点病院を中心に診療ネットワークの構築や NGO との連携で患者支援を行っていた。3. 医療機関アンケート:回答数206病院(回収率約 6 割)のうち,HIV 感染症の診療経験は42病院(20%)で,主な診療科は内科,呼吸器科,免疫血液内科であった。HIV 感染症に対する診療方針は「包括的に継続」5%,「HIV 関連は他院で,その他は継続」10%,「全て拠点病院へ紹介」72%であった。感染対策マニュアルに HIV/AIDS の項目があるのは60%であった。HIV/AIDS 診療の条件は,拠点病院との連携,職員研修,感染対策マニュアルの整備の順に多く,トップの方針,カウンセラー配置,プライバシー配慮等が続いた。保健所の HIV 抗体検査を76%が知っていたが,その57%は検査日時を知らなかった。派遣カウンセラー制度は「利用せず」,「知らない」を合わせ98%で利用実績は少ない。自由記載では継続した職員研修の必要性が挙げられた。<br/>結論 一般病院の多くは,専門医の不在,感染対策や研修,施設の未整備等の理由から拠点病院での診療を望んでいたが,拠点病院でもそれらの条件は必ずしも十分ではなかった。HIV/AIDS 診療の連携を進めるには,地域における課題の共有と包括的な医療体制の構築が必要で,そのために行政として可能な支援を模索していくべきである。

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