アルツハイマー病動物モデルの特性

  • 高橋 秀樹
    武田薬品工業(株) 医薬研究本部創薬研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Animal models of Alzheimer's disease for preclinical research
  • アルツハイマービョウ ドウブツ モデル ノ トクセイ

この論文をさがす

抄録

アルツハイマー病(AD)治療薬の前臨床段階の研究には,様々な動物モデルがそれぞれの有用性と問題点が考慮された上で効果的に利用されている.古典的な脳損傷モデルはAD脳内で病変が顕著である特定の領域の神経変性を再現できる.また,遺伝子改変動物はAβやタウ病変などのAD脳の病理学的特徴を模倣できる.一方,老化動物は加齢依存的な認知障害に関連したモデルとして確立され,老年期の諸種中枢神経系疾患治療の評価に用いられている.これらのモデルはADの分子生物学的および病態生理学的な理解に多大な貢献をしてきたとともに,治療薬候補の評価に用いられてきた.それにも関わらず,ADの薬物治療は未だ対症療法のみしか承認されておらず,その症状改善戦略も治療効果が限定的にしか認められていない.現在までに,ADの完全なモデルは確立されていないが,既存モデル以上にADの病理や行動異常を示すモデルを作製し,それらを前臨床評価に採り入れることによって,より効果的な治療法の開発が実現するだろう.次世代のADモデルを確立し,それらにトランスレーショナルな手法を適用できれば,近い将来,AD治療薬研究やAD研究そのものが大きく進展し,新たな進展抑制薬の創出につながると期待される.

収録刊行物

参考文献 (79)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ