高地適応と右心室肥大

書誌事項

タイトル別名
  • Right ventricular hypertrophy due to adaptation to high altitude
  • コウチ テキオウ ト ウシンシツ ヒダイ

この論文をさがす

抄録

哺乳動物の心臓は 2 心室 2 心房で,空気中から酸素を摂取して組織に供給している.この酸素を摂取する過程が肺循環で右心室の収縮力によって血液を肺動脈に送っている.一方,組織に酸素を供給する過程は体循環で,左心室の収縮力によって血液を大動脈に送っている.<br> 心筋重量は心臓の仕事量に比例している.即ち,左心室重量は体血圧と心拍出量に,また,右心室重量は肺動脈圧と心拍出量に依存することになる.そこで,高地環境下では適応として 1)低酸素性肺血管収縮(HPV)の上昇と 2)赤血球の増加によるヘマトクリット(Ht)の増加がある.この HPV の上昇と Ht の増加は著しい肺動脈の上昇をもたらし,その結果,右心室肥大が引き起こされる.従って,高地で見られる心肥大の特徴は肺動脈圧の上昇による右心室肥大である.一方,全身運動などによる心肥大(スポーツ心臓)は心拍出量の増加や体血圧の上昇によるもので,左・右両心室が肥大し,高所にみられる心肥大とは質的に異なる.<br> 心臓重量の変化は心室筋の仕事量(負荷量)の変化に依存しており,心室筋に対する負荷を解除すると肥大していた心筋も元に戻る.即ち,心肥大は一般の骨格筋と同様に,可逆的である.この可逆性を支持する良い例として,野生ヒメネズミを用いた,1)心室重量の季節的変化(夏と冬の間では冬の方が右心室肥大),2)生息域の緯度による違い(北方の寒い地域に生息するものの方が右心室肥大),3)地球の温暖化による右心室/左心室重量比の変化(温暖化によって,右心室/左心室重量比は小さくなる),などを挙げることができる.<br>

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (33)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ