てんかんならびに運動機能障害を伴う薬物性歯肉増殖症患者の13年間の治療経過

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  • Treatment of drug-induced gingival hyperplasia in a patient with epilepsy and motor disability: A 13-year follow-up case

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抄録

本報は, 難治性てんかんならびに運動機能障害, 中等度精神遅滞を伴う薬物性歯肉増殖症患者に対し, 歯周基本治療後, 歯肉増殖が著しく改善し, 13年間良好に維持されている症例について報告する。患者は18歳の男性で, う蝕治療と歯肉の腫れを主訴に来院した。3歳より抗てんかん薬の服用を開始し, 初診時には全顎的にプラーク及び歯肉縁上, 縁下歯石が沈着し, 浮腫性の腫脹を伴う線維性歯肉増殖が認められた。歯周基本治療後, 歯肉増殖が改善しサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)へ移行した。しかし, 20歳以降てんかん発作の多発により来院間隔が空き, 徐々に運動機能も低下し口腔内状況が悪化した。26歳時の脳梁離断手術後, 麻痺が増強しセルフケアが困難となった。その結果, 深い歯周ポケットが再発しフラップ手術を施行した。その後も患者の自立的な口腔清掃を支援すべく, 清掃用具や磨き方を工夫し1ヵ月間隔のSPTを行った。13年経過した現在は2ヵ月間隔のSPTにて良好に経過している。この症例を通し, 抗てんかん薬を多剤服用していても, プラークコントロールが良好であれば歯肉増殖の改善ならびに再発を防止できることが示された。そして, 長期にわたり健康支援するためには, 患者の意志を尊重しつつ, ライフステージや全身状態に合わせたセルフケアへの支援と, それを補うプロフェッショナルケアが重要であると考えられた。<BR>日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 269-278, 2009

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