• 田口 洋
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻口腔健康科学講座小児歯科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Eruption Disturbances of Maxillary Central Incisors and Canines
  • 萌出障害の臨床 : 上顎中切歯と上顎犬歯
  • 上顎中切歯と上顎犬歯

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抄録

上顎中切歯の萌出障害は,先行乳歯の重度齲蝕や外傷による根尖病巣が原因となって,歯胚の萌出方向が唇舌的に異常をきたすものが多い。時期が遅れると歯根が湾曲して形成されるため抜歯せざるを得ない場合があるので,発見したときには比較的早期の牽引が必要となる。臨床で頻繁に遭遇する永久歯の萌出過剰歯は,必ず歯列不正の原因となるので発見後ただちに抜去した方がよい。また,米粒大程度でエックス線不透過度の低い歯牙腫であっても萌出障害の原因となる。まれに,形成遅延の側切歯歯胚が中切歯の萌出を障害することがある。先行乳歯が癒合歯の場合に多く,前歯部交換期での精査が必要である。上顎犬歯の萌出障害は,特定の局所的原因が認められないものが全体の75%を占める。埋伏犬歯の歯軸は近心傾斜していることがほとんどで,歯冠部尖頭の側切歯歯根や中切歯歯根との重なり程度によって重症度が判別できる。軽症のものでは,先行乳歯の抜去で埋伏犬歯の歯軸改善が期待できるが,重症のものでは牽引が必要となる。側切歯が矮小であったり,先天欠如していたりすると,骨内での犬歯萌出路のガイドが欠落するため,犬歯萌出障害の原因となりうる。犬歯の萌出障害は片側性に発現するものがほとんどのため,乳犬歯の動揺度や犬歯部頬側歯肉の膨隆を両側で比較し,左右差が顕著なときにはエックス線写真による精査がきわめて重要である。

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 47 (5), 673-682, 2009

    一般財団法人 日本小児歯科学会

被引用文献 (4)*注記

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参考文献 (63)*注記

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