鈍的大動脈損傷に対する胸部下行大動脈置換術中に発症した脂肪塞栓症候群の1例

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  • A case of fat embolism syndrome during surgical graft replacement of the descending aorta for blunt aortic injury

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抄録

鈍的大動脈損傷に対する胸部下行大動脈置換術中に発症した脂肪塞栓症候群の1例を経験した。本症例では,術中から術後の急性呼吸不全と重度の全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)の原因解明に難渋し,脂肪塞栓症候群の診断が遅延した。患者は26歳の男性。歩行中に乗用車にはねられ受傷した。当院搬入時は意識清明であった。画像診断で胸部下行大動脈損傷と右大腿骨骨幹部骨折を認めた。大腿骨骨折に対し創外固定を行った後,即日,人工血管置換術を施行した。ヘパリン投与後,経皮的心肺補助装置を導入し分離肺換気を開始した前後に,気道から淡血性泡沫状の分泌物を多量に認めはじめ,急速に酸素化能が悪化した。術後も手術侵襲のみでは説明が困難なSIRSと呼吸不全が遷延した。術後5日目に前胸部に点状出血があることに気づき,脂肪塞栓症候群を疑いステロイド治療を開始した。呼吸,循環動態はすみやかに改善した。意識障害が遷延し,第21病日にmagnetic resonance imaging(MRI)を撮影したところ,T2 star強調画像や磁化率強調画像で,両側大脳白質や皮質下白質,脳梁,内包,視床,中脳から橋,小脳などに無数の微細な低信号を認め,脂肪塞栓症候群に典型的な画像であった。本症例では,脂肪塞栓症候群の特徴の一つである呼吸不全が人工血管置換術中に発症したため脂肪塞栓症候群の診断が遅延した。

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