動かしているが使えない―両手動作時に左手の空振りを呈した一症例―

  • 早川 裕子
    横浜市立脳血管医療センター リハビリテーション部 山形大学大学院 医学系研究科 高次脳機能障害学
  • 岩崎 奈緒
    ソフィア訪問看護ステーション
  • 穴水 幸子
    慶應義塾大学 医学部 精神神経科
  • 三村 將
    昭和大学医学部 精神医学教室
  • 加藤 元一郎
    慶應義塾大学 医学部 精神神経科

書誌事項

タイトル別名
  • Moving but not Using-a case with missing object due to inattention to moving left hand during bimanual movements-
  • —a case with missing object due to inattention to moving left hand during bimanual movements—
  • ─両手動作時に左手の空振りを呈した一症例─

この論文をさがす

抄録

両手動作時の左手に特異な障害を呈した症例を報告した。症例はくも膜下出血後脳梗塞を併発し,右頭頂葉病変を認めた。左半側空間無視や運動消去はなかったが,視・聴・触覚の左の消去現象を呈した。左手は高次体性感覚障害と拙劣に加え,両手動作の際,あたかも対象を操作しているかのように動作を継続するものの,実際には対象を把持せず,空振りのような動作が観察された。4 年後,両手動作時の左手の障害と消去現象は並行して消失したが,左手の高次体性感覚障害と拙劣は残存した。これまで高次体性感覚障害を伴う病巣対側上肢の拙劣症の報告はあるが,両手動作時の異常の記載はない。また本例は左半側空間無視や運動消去は呈していない。本例の障害は,4 年後にともに消失した多様式消去現象と関連し,能動的動作時に内発的に生じる体性感覚に対する消去現象により説明できる可能性が考えられ,右頭頂皮質病巣が関与しているものと思われた。

収録刊行物

参考文献 (19)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ