著明な浮腫性紅斑を合併し全身性炎症反応症候群を呈した限局型全身性強皮症の1例

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タイトル別名
  • A case of limited cutaneous systemic sclerosis complicated with severe edematous erythema and systemic inflammatory response syndrome

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抄録

症例は78歳の女性。下肢外傷で他院入院中に発熱および血液検査で炎症所見があり,皮膚感染症が疑われ抗菌薬を投与されたが改善しなかった。更に腰背部に広範に皮疹が出現し,黒色便を認めたため当院に転院となった。来院時,体温38.1°C,血圧125/69 mmHg,脈拍95/min,呼吸数24/min,室内気にてSpO2 95%。意識レベルはGlasgow Coma Scaleで13点(E4V4M5)。両側腰背部から下肢外側を中心に紅斑を認めた。血液検査では白血球増多,好酸球増多,軽度の貧血,血小板増多,CRP高値などを認めた。腹部CT検査では腰背部の皮下に広範囲に浮腫を伴う炎症所見を認め,MRI検査でも腰背部の皮下組織に広範囲に炎症所見を認めた。上部消化管内視鏡検査で逆流性食道炎を認めた。心臓超音波検査では肺動脈圧の軽度上昇を認めた。皮疹は部位を変えながら持続し,経過中に手指の関節痛と手指および足趾の皮膚硬化を認めた。各種感染症の検体検査を行ったがすべて陰性であった。逆流性食道炎および肺高血圧の所見,更に抗セントロメア抗体陽性であったことから限局型全身性強皮症と診断した。CT像では間質性肺炎の所見は認めなかった。第10病日よりプレドニゾロン20 mg/dayの投与を開始したところ,速やかに解熱し皮疹も著明に改善した。第17病日に急性心筋梗塞を起こし,著明な心機能の低下を認めたが,全身状態より保存的治療を選択して病状は安定した。以後はプレドニゾロンを漸減し,意識も次第に清明となり,第66病日に退院となった。来院時の発熱は全身性強皮症の増悪によるもの,また浮腫性紅斑は抗菌薬による薬疹によるものと考えられた。膠原病やアレルギー性疾患の急性期は感染症との鑑別に苦慮するが,プロカルシトニンを用いた速やかな感染症の除外が有用と考えられた。

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