下垂体損傷及び内頸動脈の仮性動脈瘤切迫破裂を認めた眼窩杙創の1例

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タイトル別名
  • Pituitary injury and progressive pseudoaneurysm of the internal carotid artery following transorbital penetrating injury

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抄録

経眼窩的穿通外傷では,多彩な合併損傷を来すことがあり,慎重な対応が必要である。今回我々は,下垂体一次損傷及び外傷性内頸動脈瘤を合併した経眼窩的穿通外傷の1例を経験したので報告する。症例は53歳の女性。自宅の庭で転倒した際に,植木の枝による左眼窩部杙創を来した。来院時左眼の失明と軽度意識障害が認められ,頭部CTでは左眼外側より刺入した異物が経眼窩的にトルコ鞍前壁に達していたが,明らかな脳実質の損傷は認められなかった。脳血管造影で左内頸動脈海綿静脈洞部に軽度の壁不整を認めた。第2病日に開頭による異物除去を施行した。術中尿崩症を認め,バソプレッシン投与を要した。MRIのT1強調画像で下垂体左側に腫大と異常信号を認め,下垂体損傷が示唆された。第7病日の脳血管造影検査では,左内頸動脈に動脈瘤の形成を認め,その後瘤の増大が観察されたため,コイル塞栓による左内頸動脈トラッピング術を施行した。患者は左眼の失明以外の合併症なく,第35病日に自宅退院となった。経眼窩的穿通外傷において,下垂体直接損傷を合併した例はこれまで報告がなく,稀な症例であると考えられた。また本症例では,短期間に増大する内頸動脈瘤を合併した。穿通性頭部外傷では,こうした非典型的な損傷を合併することがあり,慎重な術前診断や経過観察が必要である。

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