人工透析患者において,TS‐1至適投与量と放射線同時併用療法が奏功し,根治的切除を行い得た翼口蓋窩進展上顎歯肉癌の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of marked response to preoperative concurrent chemoradiotherapy with an optimum dose of TS-1 for upper gingival carcinoma that invaded to the pterygopalatine fossa in a chronic renal failure patient maintained on hemodialysis, enabling curative resection

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抄録

TS-1は5FUのプロドラッグであるFTに,DPD阻害剤であるCDHPと胃腸毒性を軽減するOxoを配合した新しいフルオロウラシル系経口抗腫瘍剤でこれらの機能によって口腔癌にたいして安全且つ強力な抗腫瘍効果がある。TS-1は癌に対して放射線増感作用がある。<br>われわれは術前TS-1と放射線同時併用療法をおこなった慢性腎不全によって人工透析を受けている患者における進行上顎歯肉癌の症例を報告する。患者は62歳男性で左側後方頬溝の周囲に40×25mm大の腫瘍が存在し,翼口蓋窩に浸潤していた(T4N1M0,Stage IVA)。<br>CDHPが主に腎から排泄されるので腎機能が低下した患者にTS-1を投与すると,より高濃度の血中5FU濃度が維持され,毒性が増強する。本例ではTS-1投与時の5FU濃度の治療薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行うことにより,透析を受けている慢性腎不全患者の上顎歯肉癌の治療にとって適したTS-1の投与量を推定し治療投与を行った。このプロトコールにおいて透析直後にTS-1を25mg×1回/日を隔日15回投与した。また放射線治療40Gyを併用した。骨髄抑制などの重篤な副作用なく安全に治療は行われ,PRの治療効果を得た。術前化学放射線同時併用療法が奏功したので根治的切除が可能であった。また切除標本の頭頸部癌取り扱い規約による組織学的効果判定はgrade IIであった。維持透析患者の上顎歯肉癌に対して血中薬物動態評価によるTS-1と放射線治療の併用は安全で有効な治療方法であった。

収録刊行物

  • 頭頸部癌

    頭頸部癌 36 (1), 19-25, 2010

    日本頭頸部癌学会

参考文献 (24)*注記

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