特発性側弯症患者における小脳扁桃位置異常の検討

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  • Correlation between progression of scoliosis and position of the cerebellar tonsils
  • トクハツセイ ソクワンショウ カンジャ ニ オケル ショウノウ ヘントウ イチ イジョウ ノ ケントウ

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抄録

背景: MRIの普及によって特発性側弯症患者にChiari I型奇形などの小脳扁桃の位置異常が発見される機会が増えた. Chiari I型奇形を伴う側湾症は進行性であり治療に難渋することが多いことは知られているが, 5mm未満の小脳扁桃の下垂 (tonsillar ectopia) と側弯の進行を検討した報告は少ない. 対象と方法: 特発性側弯症の診断で受診し, 初診時のCobb角が50°以下で, Risser signが4以下の女性患者118例を対象に頭頸移行部のMRIを撮影した. 小脳扁桃の下垂度によってChiari I型奇形 (C群), tonsillar ectopia (E群), 下垂のない例 (N群) に分類し, 各群と側弯の進行の相関を検討した. 結果: C群は4例 (3.4%), E群は10例 (8.5%), N群は104例 (88.1%) であった. 側弯の進行を認めたものは, 118例中42例 (35.6%) であった. その内訳は, C群が4例 (100%), E群が4例 (40%), N群が34例 (32.7%) であった. C群とE群 (P=0.04), C群とN群 (P=0.006) で側弯の進行に有意差を認めた. また, E群内では, 小脳扁桃の下垂が2mmを超えるものが有意に側弯の進行を認めた (p=0.048). 考察: 今回の結果から, 2mm以下のtonsillar ectopiaは側弯の進行に対しては病的意義がなく, 2mmを超えるtonsillar ectopiaは, Chiari I型奇形を合併した側弯症と同様に進行の危険性が高く注意深く経過を観察する必要があると考えられた. 一方, 頭蓋骨の成長により小脳扁桃の下垂が軽減すると側弯の改善が認められたという報告がある. tonsillar ectopiaにはChiari I型奇形が改善した例が含まれており, 小脳扁桃の下垂が2mm以下まで軽減すると側弯の進行が安定化すると推測された.

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