Fetal programming による卵巣摘出ラットの血管機能障害に対するエストロゲン補充の効果

書誌事項

タイトル別名
  • The efficacy of estrogen replacement therapy for vascular dysfunction induced by a maternal low protein diet
  • Fetal programming ニ ヨル ランソウ テキシュツ ラット ノ ケッカン キノウ ショウガイ ニ タイスル エストロゲン ホジュウ ノ コウカ

この論文をさがす

抄録

背景: 妊娠中の母体の低蛋白栄養により, 児の成人期での高血圧, 冠血管障害, 糖尿病などの成人病が発症しやすくなることが知られている. さらに動物実験では雌より雄に高血圧が発症しやすくなることが明らかになっている. 過去にわれわれは卵巣を摘出し, 低エストロゲン状態にした母体低蛋白栄養のラットを用いた実験で, コントロール群に比べ, 母体低蛋白栄養群では高血圧や冠動脈周囲の線維化が有意に進行し, 卵巣摘出群でさらに顕著であることを証明している. また, wire myographを用いた血管機能評価では, ブラジキニンに対する血管拡張反応が有意に障害されたことから, 母体低蛋白栄養による高血圧や冠動脈血管周囲の線維化にはブラジキニンが関与していることも明らかにしてきた. そこで, 今回の実験は妊娠中の母体低蛋白栄養によるfetal programmingにより誘導された血管内皮細胞機 能障害がエストロゲン補充により改善することを研究仮説として実験を行った. 方法: Wistar ratを交配し, 妊娠中2つの栄養群;コントロール群 (C), 低蛋白栄養群 (R) に分け飼育した. 分娩後, 両群とも通常餌とし, 仔は日齢50に各群に対し次の3種の手術を行い, 合計6群を作成した;sham手術群 (CO, RO), 卵巣摘出群 (CX, RX), エストロゲン補充群 (CE, RE). 日齢50,100,150,175に血圧を測定し, 日齢175に腸間膜動脈を摘出しwire myographを用いて血管機能評価を行った. 結果: 血圧の変化はいずれの日齢においても各群間に有意差を認めなかった. wire myographにおいては, ブラジキニンに対する血管拡張反応がCOに対しRO, RXで有意に鈍化し, REで有意に改善を認めた. 結論: 母体低蛋白栄養で起こる血管機能障害における性差発現にはエストロゲンが関与していることが再確認された. また, 引き起こされた血管機能障害はエストロゲンを補充することで代償することができる可能性があることが示唆された.

収録刊行物

参考文献 (69)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ