老人性難聴の発症機序<br>─神経栄養因子による液性制御─

  • 土井 勝美
    大阪大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科
  • 佐藤 崇
    大阪大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科

書誌事項

タイトル別名
  • Presbyacusis and Neurotrophic Factors

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抄録

ヒト老化徴候を示すKlotho 遺伝子改変マウスの加齢性の聴力低下については、ラセン神経節細胞の生存、血管条機能の維持にKlotho蛋白が液性因子として必須であることを示した。Klotho蛋白は、FGFおよびInsulin/IFG-1 シグナルを制御することが報告されている。一方、p75NTR遺伝子改変マウスの加齢による聴力低下については、ラセン神経節細胞および感覚細胞の生存にp75NTR受容体の存在が必須であることを示唆している。神経細胞・感覚細胞の保持に、Trk受容体とp75NTR受容体との平衡バランスが重要であり、IGF-1シグナルが同平衡バランスを制御することが報告されている。<br>聴覚の老化には、FGF、Insulin/IGF-1 シグナル、NGF、BDNF、NT-3などさまざまな神経栄養因子・細胞増殖因子が関与していることが示唆され、将来的にこれらの分子を標的とする遺伝子診断法の確立や新たな老人性難聴の予防法・治療法の開発がなされることが望まれる。

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参考文献 (14)*注記

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