外来種を減らせても生態系が回復しないとき:意図せぬ結果に潜むプロセスと対処法を整理する

  • 亘 悠哉
    日本学術振興会特別研究員PD・森林総合研究所 野生動物研究領域 Ecologie, Systématique et Evolution, UMR CNRS 8079, Université Paris-Sud 11

書誌事項

タイトル別名
  • Processes of and solutions to unintended ecosystem responses following invasive species removal: a review
  • ガイライシュ オ ヘラセテモ セイタイケイ ガ カイフク シナイ トキ イト セヌ ケッカ ニ ヒソム プロセス ト タイショホウ オ セイリ スル

この論文をさがす

抄録

外来種の侵入による生物多様性・生態系機能の低下,および経済被害はきわめて甚大で,各地域特有の自然や暮らしを脅かす切実な問題となっている.こうした問題を解決するために,各地で外来種駆除が実施されており,近年では根絶成功例や在来種の回復など,駆除による対策の有効性が成果として現れてきている.一方で,たとえ外来種を減少させることができたとしても,インパクトを受けていた生態系が必ずしも回復するとは限らず,時には状況がさらに悪化してしまう場合もある.このような知見は個々の論文で報告されてきたものの,全体像が整理され示されたことはこれまでになかった.本総説では,このような知見を整理し,外来哺乳類の影響の環境依存性や非線形性,ヒステリシス,外来種間の相互作用などを,意図しない現象の理由として挙げ,そこには,食性のスイッチングやアリー効果,外来種の侵入と生息地改変の複合効果,メソプレデターリリースなどのプロセスが関わりうることを紹介した.また,それぞれのプロセスに応じた対処法として,在来種の回復の評価プロセスの導入や生息地管理,他の生物の管理などをリストアップした.以上のような対処法が取り入れられた総合的な外来種対策の実践例は,近年報告が増えはじめてきた段階である.このような個々の実践例を積み重ね,対処法の有効性を検証していくことは,個々の地域の問題を解決するだけでなく,さらなる実践例を生み出す上でも重要な役割を果たしていくであろう.<br>

収録刊行物

  • 哺乳類科学

    哺乳類科学 51 (1), 27-38, 2011

    日本哺乳類学会

参考文献 (91)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ