PD排液異常により発見された穿孔性腹膜炎の1例

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タイトル別名
  • A patient with perforative peritonitis undergoing peritoneal dialysis: A case report
  • 症例報告 PD排液異常により発見された穿孔性腹膜炎の1例
  • ショウレイ ホウコク PDハイエキ イジョウ ニ ヨリ ハッケン サレタ センコウセイ フクマクエン ノ 1レイ

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抄録

症例は68歳,男性.主訴は,全身倦怠感,PD排液異常.既往歴に関節リウマチを認める.現病歴:慢性腎不全(原疾患不明)のためSMAP法にてPDカテーテル挿入.その後2006年10月からCAPDにて当院で透析導入.2年9か月のPD歴で,出口部感染や腹膜炎の既往を認めず経過していた.2009年6月X日にエリスロポエチン注射と採血を実施,特に体調不良の訴えもなく帰宅した.後日判明した採血結果でCRPが31.24mg/dLと異常高値を示していた.その前後に腹痛なく,排液混濁も認めなかったが,同年7月10日早朝より「腹痛はないが,突然に透析液の注入途中から肛門より排液する」との訴えで診察依頼があり,独歩にて救急来院した.PDカテーテルから食物残渣を含む混濁した排液を確認,穿孔性腹膜炎を疑い,緊急開腹手術をした.カテーテル周囲で瘻孔形成し,癒着した消化管の剥離に難渋して穿孔部位の同定は困難であった.臨床経過から本症例の穿孔性腹膜炎の機序は次のとおりと推察する.すなわち,憩室炎などを原因にすでに潜在した腹膜炎を約2週間前に発症し,被覆した腸間膜とカテーテルが治癒過程において癒着.その後,機械的刺激によりCAPDカテーテル先端が脆弱箇所を穿通し,腸管内に迷入した.PD患者の穿孔性腹膜炎の診断はしばしば困難である.その理由に,(1)free airや腹水が消化管穿孔の根拠になりにくいこと,(2)腹膜透析液による洗浄効果で腹膜刺激症状が緩和されること,(3)通常のPD腹膜炎との鑑別が困難であること等があげられ,高い死亡率の原因となっている.穿孔性腹膜炎の死亡率が高いことから臨床上,極めて危険な合併症であるといえる.腹膜透析液による洗浄効果で腹膜刺激症状が緩和されるなど発見が遅れる可能性があることを留意し,排液の詳細な観察ならびに炎症所見などのデータの推移には十分注意する必要があると思われた.

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参考文献 (43)*注記

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