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- 安西 尚彦
- 獨協医科大学 医学部 薬理学講座
書誌事項
- タイトル別名
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- Overview: transportsome as a fundamental unit for the onset of diseases
- オーバービュー : シッカン ハッショウ ノ キホン ユニット ト シテ ノ トランスポートソーム
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抄録
多細胞生物にとって,細胞内外環境の恒常性維持はその生存にとって必須である.受動拡散により細胞膜を通過できる脂溶性の低分子物質に対し,無機イオンや生体代謝に関与する多くの水溶性有機物質は脂質二重層不透過であり,細胞の内外環境を一定に保つためにはその膜通過を可能にする膜輸送分子(チャネル,トランスポーター)を必要とする.これらの分子実体解明に続くチャネル病・トランスポーター病などの遺伝子異常による疾患が明らかになると,膜輸送分子自体の異常のみならず,それを調節する感受装置からのシグナル(ホルモン等)がレセプター異常により伝達されない場合や,トラフィッキングの障害により細胞膜上に適正に移動できずに膜輸送が障害される場合などの例が見出された.それらがチャネル・トランスポーターを中心とした膜輸送機能ユニット(分子複合体)である「トランスポートソーム」の概念を生み出したと言える.すなわち生体膜物質輸送の機能単位を,輸送分子群,機能制御分子群,それらを束ねる足場タンパク質からなる輸送分子複合体と捉えることで,膜輸送研究が現在直面している個々の単一輸送分子からのアプローチの限界を克服し,細胞・組織・個体の機能および病態を分子レベルで理解することが可能になるというアイデアである.生体膜輸送研究をこのような新たな主導原理のもとに推進し,トランスポートソームの分子構築,生体膜との相互作用,および生理機能とその破綻による病態を解析することにより,トランスポートソームの実体と生体恒常性における意義の解明が期待される.「分子」と「生体」を結ぶ新たな階層「輸送分子複合体(トランスポートソーム)」の導入は,生理学・基礎生物学のフロンティアの開拓,および臨床医学・創薬科学等の実用面での重要な基盤の確立につながるものと期待される.
収録刊行物
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- 日本薬理学雑誌
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日本薬理学雑誌 139 (2), 52-55, 2012
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204276006528
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- NII論文ID
- 10030456120
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- NII書誌ID
- AN00198335
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- ISSN
- 13478397
- 00155691
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- NDL書誌ID
- 023511199
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- Crossref
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可