コレステロールの胆汁排泄におけるトランスポートソーム

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  • Transportsome in biliary cholesterol secretion
  • コレステロール ノ タンジュウ ハイセツ ニ オケル トランスポートソーム

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抄録

コレステロールの胆汁排泄はコレステロールの恒常性維持を考える上で重要な要素の1つであり,このプロセスはコレステロール排出トランスポーターであるATP-binding cassette G5(ABCG5)とABCG8のヘテロダイマー(ABCG5/G8)と,コレステロール吸収トランスポーターであるNiemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)により制御されている.筆者らは,これらトランスポーター以外の新たなコレステロール胆汁排泄制御因子として,胆汁中に分泌されるコレステロール結合タンパク質であるNiemann-Pick C2(NPC2)に着目した.ABCG5/G8およびNPC1L1のコレステロール輸送活性に及ぼす分泌型NPC2の影響について,当研究室で構築したin vitro機能評価系を用いて検討を行ったところ,NPC2はNPC1L1機能には影響を与えないものの,ABCG5/G8によるコレステロール排出の促進因子として機能しうることが示された.そこで,in vivoにおける胆汁中NPC2の生理作用を検討するために,アデノウィルスによる遺伝子導入システムを用いて,肝臓におけるNPC2発現量を人為的に変動させたマウスを作出し,その胆汁脂質を解析した.その結果,胆汁中NPC2量と胆汁中コレステロール濃度の間には正の相関関係が認められ,生体内においても胆汁中NPC2がコレステロール排出を正に制御していることが示された.また,細胞内コレステロール輸送能を欠損した変異型NPC2もこの作用を有することから,胆汁中NPC2は細胞内コレステロール輸送とは独立した機能としてコレステロール排出促進作用を持つことが示された.さらに,このようなABCG5/G8とNPC2間の機能連関に加えて,NPC2の発現量・分泌量がNPC1L1により負に制御されるという新たな制御機構も見出された.コレステロールの胆汁排泄制御機構の破綻は脂質異常症や胆汁うっ滞,コレステロール胆石などの肝胆道系疾患の発症につながりうることから,新たに見出されたNPC2・ABCG5/G8・NPC1L1による相互機能連関は,コレステロールの全身動態制御や種々の脂質関連疾患の発症リスクを考える上で重要な知見である.

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