合成Xa阻害薬フォンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ<sup>®</sup>皮下注5 mg,7.5 mg)の薬理学的特性と臨床試験成績

  • 鈴木 巌
    グラクソ・スミスクライン(株)開発本部 メディカル・アフェアーズ部門 ファーマ部 血栓症・専門領域メディカル課
  • 小関 靖
    グラクソ・スミスクライン(株)開発本部 メディカル・アフェアーズ部門 ファーマ部 血栓症・専門領域メディカル課

書誌事項

タイトル別名
  • Preclinical and clinical data of the synthetic Xa inhibitor fondaparinux (Arixtra<sup>®</sup>)
  • 新薬紹介総説 合成Xa阻害薬フォンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ皮下注5mg,7.5mg)の薬理学的特性と臨床試験成績
  • シンヤク ショウカイ ソウセツ ゴウセイ Xa ソガイヤク フォンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ ヒカ チュウ 5mg,7.5mg)ノ ヤクリガクテキ トクセイ ト リンショウ シケン セイセキ
  • Preclinical and clinical data of the synthetic Xa inhibitor fondaparinux (Arixtra®)

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抄録

フォンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ®;以下フォンダパリヌクス)は,未分画へパリン(unfractionated heparin: UFH)のアンチトロンビン(antithrombin: AT)結合部位を完全化学合成した新規の抗凝固薬であり,以下に示す薬理学的データが得られている.(1)ATに結合し,そのトロンビン阻害作用には影響せずに活性化血液凝固第X因子(Xa因子)阻害作用を増強した.(2)in vitroの測定系では,UFHの約4倍の活性であった.(3)複数の実験系でトロンビン産生を阻害した.(4)プロトロンビナーゼ複合体の形成を阻害した.(5)動脈・静脈血栓モデルで血栓形成抑制作用を示し,その時間経過は血漿中の抗Xa活性と同様に推移した.(6)皮下出血モデルで,効果と安全性のマージンはUFHに比べて高かった.(7)血小板凝集を促進しなかった.(8)II型ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia: HIT)の発症誘導の可能性は極めて低いことが示された.(9)静脈血栓溶解モデルでt-PAのフィブリノゲン溶解活性および血栓溶解作用を増強した.(10)活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)とプロトロンビン時間(prothrombin time: PT)を延長させたが,その程度は小さかった.(11)単回皮下投与後,最高血漿中濃度(Cmax)には投与後約2時間で達し,消失半減期は14~17時間,絶対的生物学的利用率は101%であった.(12)in vitro試験では,臨床血中濃度での血漿タンパク結合率は97~98.6%で,主にATと結合した.(13)腎機能低下患者では,クレアチニンクリアランス(CLcr)の低下に伴い,AUC0-∞が増加し,消失半減期が延長した.急性肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)および深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の初期治療を目的とした臨床第III相試験(海外・国内)では,フォンダパリヌクスの既定用量を1日1回反復皮下投与した結果,海外の試験では,対照薬であるUFHあるいはエノキサパリンと同等の治療効果と安全性が確認され,国内の試験でも治療効果が確認された.上述のデータを基に急性PTEおよびDVTの初期治療薬としての承認申請を行い,2011年1月にアリクストラ®皮下注5 mg・7.5 mgの製造販売承認を得た.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 139 (3), 117-126, 2012

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (70)*注記

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