非神経性組織におけるグルタミン酸シグナリング

  • 檜井 栄一
    金沢大学 医薬保健研究域 薬学系薬物学研究室
  • 米田 幸雄
    金沢大学 医薬保健研究域 薬学系薬物学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Glutamate signaling in non-neuronal tissues
  • ヒシンケイセイ ソシキ ニ オケル グルタミンサン シグナリング

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抄録

哺乳動物の中枢神経系においてグルタミン酸(Glu)は,シグナル関連分子である,Gluレセプター(GluR),細胞膜型Gluトランスポーター(GluT)あるいはベジクル型Gluトランスポーター(VGLUT)を介して,興奮性神経伝達物質として機能する.一方,我々の研究グループを含め,複数の研究グループにより,特定の非神経性末梢組織においても,Gluが細胞間シグナル伝達に使用される情報伝達物質の1つである可能性が提唱されている.たとえば,骨組織では骨を形成する骨芽細胞と骨を吸収する破骨細胞による骨リモデリングが営まれ,両者がバランスを保つことにより,骨の質および量が正常に維持されている.骨組織においては,N-methyl-D-aspartic acid(NMDA)レセプターをはじめ,多くのGluRの機能的発現が報告されている.特に,骨芽細胞においては,Gluが細胞内情報伝達物質として機能するために必要な3つの機構,つまり(1)ベジクル内へ興奮性アミノ酸を蓄積し,細胞外へ放出する出力系(VGLUT),(2)放出されたシグナルを受容する入力系(GluR),そして(3)シグナルを終止する終止系(GluT)のすべての分子が発現することが明らかとなっている.また,骨組織以外においても,膵臓,肺,肝臓,副腎,血管内皮細胞,精巣など,特定の末梢組織において,機能的Gluシグナル関連分子の発現が報告されている.このように,Gluは中枢神経系においては興奮性神経伝達物質として,さらには,骨組織を含む特定の非神経性末梢組織においては,オートクラインあるいはパラクラインメディエーターとして,生体内のホメオスタシスの維持機構に二重の役割を果たすものと思われる.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 139 (4), 165-169, 2012

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (94)*注記

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