骨格系細胞群のシグナル応答性解明研究

  • 檜井 栄一
    金沢大学 医薬保健研究域薬学系 薬物学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Elucidation of signal response mechanisms in bone-related cell lineages
  • 受賞講演 骨格系細胞群のシグナル応答性解明研究
  • ジュショウ コウエン コッカクケイ サイボウグン ノ シグナル オウトウセイ カイメイ ケンキュウ

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抄録

地球上の生物が生命活動を維持するうえにおいて,骨格系の適切な形態形成および機能維持は必須であるが,その骨格系の支持に重要な役割を担う骨格系細胞群は,主に骨芽細胞,破骨細胞および軟骨細胞である.骨軟骨代謝調節機構およびその障害に基づく病態に有効な治療法を開発するためには,これら個々の細胞の分化および機能に関わる調節因子や制御機構に関する解析を進めることが必要であると考えられる.そこで著者らは,軟骨細胞,骨芽細胞および破骨細胞を中心とした骨格系細胞群について,細胞外シグナルに対する応答性を網羅的かつ統合的に分子薬理学的手法を用いて解析を行った.その結果,(1)内分泌シグナルによる時計遺伝子を介した軟骨細胞機能調節機構,(2)酸化ストレスシグナル応答性転写制御因子による骨軟骨細胞機能調節機構,(3)神経分泌/自己分泌シグナルによる骨軟骨組織の機能調節機構,という骨関節組織にとって全く新しい3種の分子基盤を世界に先駆けて提唱した.すなわち,骨軟骨代謝性疾患に対する新規創薬標的分子として,「内分泌シグナル応答性時計遺伝子」,「酸化ストレスシグナル応答性転写制御因子」および「神経分泌/自己分泌シグナル応答性神経性アミノ酸シグナル分子」を見出した.現在日本における骨粗鬆症患者は1,000万人を超えると推定されており,また変形性関節症患者および関節リウマチ患者を合わせると潜在的患者数で約3,000万人と推定されている.これら骨軟骨代謝性疾患に対する効果的な治療法の確立および治療薬の開発は本邦における差し迫った社会的緊急課題である.本研究により明らかとなった新規分子基盤により,骨軟骨代謝性疾患の効果的治療法確立および治療薬開発を指向する新規治療的戦略が展開されることを期待したい.

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