屈折矯正における調節機能の役割 ―臨床から学んだ眼精疲労の正体―

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タイトル別名
  • The Role of Accommodative Function in Refractive Correction —Aspects of Asthenopia That Could Be Understood through Medical Treatment—

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抄録

<p>私達が一定の距離にある物体を注視しているときの屈折値はリズミカルに揺れ動いている。これを調節微動という。調節微動は0.6Hz未満のゆっくりとした低周波数成分と,1.0~2.3Hzの比較的速い高周波数成分(HFC)に分けられる。HFCは毛様体筋の震えによって生じ,毛様体筋に過剰な負荷がかかると増加する。HFCは健常な毛様体筋ではある程度までの調節負荷を加えても上昇しないが,疲労した毛様体筋ではわずかな負荷でも上昇する。HFC値はビデオゲームを行った後には上昇し,休息によって低下する。HFC値が上昇していた眼では,累進屈折力レンズ眼鏡や遠近両用コンタクトレンズの装用によって有意に低下する。眼精疲労に有効といわれている健康食品(アスタキサンチン)の摂取によってもHFC値は低下する。近視の進行について多くの報告がなされており,一見矛盾するような結果が混在する。しかし調節微動に着目すれば,すべての報告に共通の関連性を見い出すことができる。近視の進行に調節微動が関与する仮説(mechanical stress hypothesis)を提案したい。眼精疲労の診断治療には調節微動の観察が有用である。生涯にわたって快適な矯正を提供するためには,これからの眼科学では屈折矯正を学ぶ前に調節機能を学習することが必須である。</p>

収録刊行物

  • 視覚の科学

    視覚の科学 33 (4), 138-146, 2012

    日本眼光学学会

参考文献 (20)*注記

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