歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の実態と歯科医師の認識

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タイトル別名
  • Intraoral Injuries from Toothbrush Use and Recognition of Risk by Dentists

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抄録

日常用いられている道具の中には,思わぬ事故を引き起こすものがある。歯科医師が指導で用いている歯ブラシによる口腔領域における事故も散見される。そこで著者らは歯ブラシ外傷の実態とそれに対する歯科医師の認識を明らかにするために,小児歯科医を中心とした歯科医師に対してアンケート調査を行い歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の予防対策を検討した結果,以下の結論を得た。1 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)を受傷する年齢は,「2~3 歳」が最も多く,次に「4~5 歳」であった。2 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)は,「頬粘膜」と「口蓋」の受傷が多かった。外傷部位と受傷年齢の間に有意な関連は認められなかった。3 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)時の状況は,「歯ブラシをくわえて転倒」が最も多かった。歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の状況と受傷年齢の間に有意な関連は認められなかった。4 .治療に関して,「経過観察」が最も多かった。5 .70%以上の歯科医師は,4 歳までに歯ブラシを持たせての指導を行っていた。84.1%の歯科医師は,歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の危険性を注意していた。一方,歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)を経験していたにもかかわらず,その危険性を注意しない歯科医師もいた。6 .歯科医師の「歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の経験の有無」と「子どもに歯ブラシを持たせる年齢」との間に,有意な関連は認められなかった。7 .テキストマイニング分析より,歯科医師による歯磨き指導時の具体的な注意事項は,「寝かせ磨き」,「監視する」,「歩かせない」などが平均的な内容であった。また,臨床経験が25 年以上の歯科医師は「低年齢に指導」,「歩かせない」などを特に指導していることが示された。

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 50 (5), 367-374, 2012

    一般財団法人 日本小児歯科学会

参考文献 (39)*注記

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