術前診断しえたガス産生のない肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎の1例

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  • A Case of Panperitonitis due to Rupture of Liver Abscess without Free Air, Preoperatively Diagnosed

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抄録

症例は82歳,男性.突然の腹痛を主訴に来院し,腹膜炎の診断で入院となった.腹部CTで肝左葉外側区に膿瘍を認めた.腹水の貯留を認めたが,腹腔内遊離ガスはなく,その他に腹膜炎の原因となりうる所見はなかった.肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.肝左葉に穿孔部があり,排膿を認めた.膿瘍腔と腹腔内の洗浄とドレナージを行った.起因菌としてKlebsiella pneumoniaeが検出された.術直後は敗血症性ショックの状態であったが改善し,術後35日目に軽快退院となった.肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎は比較的稀な疾患であり,特にガス産生のない症例は近年報告が減少している.このため術前に確定診断することは困難で,手術の判断に苦慮することも多い.糖尿病の合併など,全身的な感染防御機構が低下している症例も増加しており,重症化の危険性が高いので,時期を逸することなく処置を行う必要がある.

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