アテロコラーゲン膜/シリコン膜とbFGF製剤を用いた鼓膜再生治療

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  • Regenerative therapy for closure of tympanic membrane perforations using basic fibroblast growth factor and an atelocollagen/silicone bilayer

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抄録

当科での鼓膜再生外来で行われている、アテロコラーゲン膜/シリコン膜とbFGF製剤を用いた穿孔性中耳炎に対する鼓膜再生治療について詳細な検討を行った。2009年7月から2011年8月までの2年間に鼓膜再生外来を受診し、1年以上の経過観察が可能であった140症例(男性45例、女性95例)を対象とした。年齢は13歳から90歳で平均64.8歳(中央値67歳)であった。<BR>(1)鼓膜閉鎖成績は、術後3カ月の時点において完全閉鎖が117例/140例(83.6%)であったが、術後1年以上では、94例/140例(67.1%)であった。術前の穿孔の大きさ別の閉鎖率では、小穿孔では48例/67例(71.6%)、中穿孔では35例/51例(68.6%)、大穿孔では11例/22例(50.0%)であった。また完全閉鎖した94症例における閉鎖までの平均処置回数は1.38回であった。<BR>(2)閉鎖成績に影響する術前要因の解析では、1)穿孔縁の観察が困難、2)鼓膜石灰化が著しい、3)辺縁性の穿孔である場合に有意差を持って鼓膜穿孔残存の頻度が高かった。<BR>(3)鼓膜再生治療の合併症として、術後の耳漏が18例/140例(12.9%)で認められた。術後のepithelial pearlの形成は7例(5.0%)で認められた。また、bFGF製剤を添加したアテロコラーゲンが中耳腔に落ち込んだ症例では、新生鼓膜と中耳粘膜が癒着し、癒着部に炎症を伴う線維組織が増殖する症例を1例経験した。bFGF製剤の使用にあたっては、中耳粘膜への安全性が確立されていないので、中耳腔に流れ込まないよう注意して添加することが肝要と考えられた。

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