シクロホスファミドによるマウス臼歯の歯根形成抑制と歯の萌出遅延

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タイトル別名
  • Inhibition of Molar Eruption and Root Elongation by Cyclophosphamide in Young Mice

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抄録

小児がんの治療成績の進歩は顕著で,小児がん経験者の多くが成人期を迎えるようになっている。しかし,治療に多剤の抗腫瘍薬を用いた化学療法や放射線療法などが併用されることもあり,成長期の小児にとってそれらの影響は少なくない。近年の小児がん長期フォローアップの経過観察からは,口腔領域における様々な晩期合併症が認知されるようになってきた。本研究は,生後12 日目のマウスにシクロフォスファミドを投与し,生後14 日から27 日までの下顎第一臼歯における萌出・歯根形成過程をエックス線学的および病理組織学的に検討し,以下の結果を得た。1 .下顎第一臼歯遠心根の歯根長は,生後16 日では実験群と対照群で同程度であったが,生後27 日では実験群の歯根長が短く,対照群との間に有意差を認めた。2 .ヘルトヴィッヒ上皮鞘を構成する細胞は,薬剤投与後に萎縮・変形を示し,早期に消失した。3 .実験群では,セメント質の早期形成開始,歯槽骨量の減少,歯根膜腔の拡大および歯根膜線維の減少が観察され,歯の萌出遅延傾向を認めた。本研究の結果から,シクロホスファミド投与は,形成途中の歯根におけるヘルトヴィッヒ上皮鞘の形態変化と早期喪失を引き起し,また歯周組織の構築に影響を与え,歯の萌出遅延の誘因となることが示唆された。

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 51 (3), 360-371, 2013

    一般財団法人 日本小児歯科学会

参考文献 (32)*注記

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