ラット腸上皮細胞におけるケモカインの産生と酪酸および薬物による影響

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抄録

特発性炎症性腸疾患 (Idiopathic inflammatory bowel disease : IBD) において腸上皮細胞は障害の標的となるだけでなく,自ら炎症に参加して諸因子を産生し,IBDの病因やその臨床症状にも関与することが推測される.大腸上皮細胞においては種々のサイトカイン産生が報告されているが,小腸上皮細胞におけるサイトカイン産生に関する報告は少ない.この研究ではラット非癌小腸上皮細胞株であるIEC-6細胞を用い,C-X-CケモカインであるGro-αおよびC-Cケモカインであるmonocyte chemoattractant protein 1 (MCP-1) の産生について検討した.IEC-6細胞は,IL-1β刺激によりGro-αを,IL-1βおよびTNF-α刺激によりMCP-1を産生し,酪酸は,IEC-6細胞のIL-1β刺激によるGro-αの産生を増強し,一方,MCP-1の産生は抑制した.IL-1β刺激Gro-αの産生は,5-aminosalicylic acid (5-ASA) により増強し,IL-1β刺激MCP-1の産生は,5-ASAとsulfasalazineにより増強した.dexamethasoneは有意にIL-1β刺激Gro-αおよびMCP-1産生を抑制し,一方,cyclosporin Aは影響を与えなかった.小腸上皮細胞は,Gro-αおよびMCP-1を産生し,腸管における免疫反応に関与すると考えられ,また,小腸上皮細胞におけるC-X-CケモカインとC-Cケモカインの産生調節機構は異なる可能性が示唆された.

本文データはCiNiiから複製したものである。

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