培養骨膜細胞とフィブリン複合体を用いた骨のティッシュ エンジニアリング

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抄録

ティッシュ エンジニアリングは,現在の組織移植や組織再建術に応用される新しい方法として注目されている.骨のティッシュ エンジニアリングでは,これまで骨膜から得られる未分化間葉系細胞を,骨芽細胞へ増殖,分化させ,新生骨形成が試みられてきた.しかし,骨膜における骨形成能を詳細に評価した報告はなく,骨膜の加齢による変化および骨膜の至適採取部位は不明であった.さらに,臨床応用可能なサイズの骨組織の再生は,これまで報告されていない.本研究では,実験1として,イヌの骨膜組織構造および培養骨膜細胞の検討より,骨膜の加齢による変化および骨膜の至適採取部位を明らかにした.実験2として,生体親和性と生体内吸収性を有するフィブリンと培養骨膜細胞の複合体を,ヌードマウス皮下へ移植し,新生骨形成の有無を検討した.実験3として,本研究を臨床応用する立場から,この複合体をイヌ頭蓋骨骨欠損部へ自家移植した.イヌの骨膜組織構造および培養骨膜細胞を検討した結果,幼若かつ橈骨部の骨膜において,高い骨形成能を有することが明らかとなった(実験1).培養骨膜細胞は,培養4週目に最も高いアルカリフォスファターゼ活性を示したため,橈骨骨膜を4週間培養し,得られた培養骨膜細胞とフィブリン複合体をヌードマウス皮下へ移植した.その結果,軟骨内骨化の過程を経て骨組織が形成された(実験2).イヌ頭蓋骨骨欠損部へ,培養骨膜細胞とフィブリン複合体を自家移植した結果,骨欠損部には成熟した自家骨組織が観察された(実験3).本研究の結果は,臨床応用が可能であることが示唆され,顎・顔面外科領域における骨欠損部や仮骨延長部に対して,非常に有用な骨再建術になりうると考えられた.

本文データはCiNiiから複製したものである。

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