遺伝子発現解析から検討した乳癌の生物学的多様性

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抄録

165個の癌関連遺伝子を一度に発現解析できるmembrane-based hybridization array法を用いて42例の正常乳腺組織と乳癌組織での遺伝子発現を比較し,発現異常遺伝子を同定するとともに発現異常遺伝子間の関連性を検討した.正常組織と比べ癌組織で5培以上の発現上昇あるいは発現低下がみられた遺伝子を高発現または低発現遺伝子とすると,症例間での変化した発現遺伝子数に相違がみられ,1症例につき平均13遺伝子が高発現で19遺伝子が低発現であった.42例中7例以上の症例で高発現あるいは低発現であった遺伝子に限定すると,12遺伝子が高発現で21遺伝子が低発現であった.高発現遺伝子のなかでは細胞外マトリックス分解酵素(MMPs)が多く,MMP-2,MMP-9,MMP-11は高発現で,うちMMP-9とMMP-11の発現に有意な相関が認められた.しかしMMP-7は低発現遺伝子で,他のMMPsと発現に相関はなかった.低発現遺伝子ではアポトーシス関連遺伝子が多く見られ,caspase-2発現低下はBad低発現と有意な関連が認められたが,Fas発現低下との関連はみられなかった.臨床病理学的因子の関連からFGFR-2発現低下は腫瘍径の増大と有意な相関がみられた.本法による遺伝子発現解析から乳癌の生物学的多様性が示唆され,同時に本法によって乳癌の新しい生物学的予後因子が同定できる可能性がある.

本文データはCiNiiから複製したものである。

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