<原著>Candida albicansの厚膜胞子の増殖能に関する研究

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  • <ORIGINAL>Study On the proliferative ability of chlamydospores of Candida albicans
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抄録

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Candida albicans(以下C.albicans)は,鵞口瘡やカンジダ膣炎や皮膚カンジダ症などを起こし,真菌の中でも病原性の強いもののひとつである。また生体内常在真菌として健康人の口腔,咽頭,腸管粘膜,膣などに存在しており通常は無害である。しかしながら,C.albicansはcompromised host,いわゆる宿主の抵抗性が減弱した人などに発症する日和見感染症の代表的起因菌でもあり,また近年,白血病,悪性腫瘍などで抗腫瘍剤や免疫抑制剤の投与により生体内微生物叢が変化する時にも菌交代現象としてCandida症は発症する。歯科領域においては,主に有床義歯装着患者に見られる義歯と接触する粘膜面の発赤,腫脹を主訴とする義歯性口内炎の原因菌としても考えられている。通常,C.albicansは2形性の真菌で,サブロー寒天培地を用いて37℃で培養すると,直径4~6μmの球状ないし卵形の酵母状となりその多くは,乳白色のクリーム様の集落を形成し分芽によって増殖する。一方,コーンミール寒天培地を用いて25℃ないし室温で培養すると,酵母細胞は発芽管が長く伸びて仮性菌糸を形成し,さらに各菌糸の接合部に多数の分芽胞子を形成すると共に,菌糸の末端に厚膜胞子を形成するのが本菌の特徴である。一般に,真菌の胞子は種の保存のために分散し,適当な条件下で発芽して増殖するための高度に特殊な分化をした細胞である。また,厚膜胞子は細菌における芽胞に相当する一種の耐久体ともみなされている。しかし,C.albicansの厚膜胞子は前述のように仮性菌糸の末端に形成され,分芽胞子に比べてその数は少なくかつ厚い細胞壁に覆われており,形成直後の厚膜胞子においては核やミトコンドリアが認められるが,成熟した厚膜胞子においては核やミトコンドリアが見られず,ほとんどが空胞とスポンジ様構造物で満たされている。そこで本研究においては,C.albicansの厚膜胞子が胞子としての重要な機能である増殖能と耐久性を兼ね備えたものであるか否かについて分芽胞子と比較検討した。

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