<原著>放射線と超音波の共同効果に対するICRマウスの胎児の影響

  • 具 然和
    鈴鹿医療科学技術大学 保健衛生学部 放射線技術科学科
  • 長谷川 武夫
    鈴鹿医療科学技術大学 保健衛生学部 放射線技術科学科
  • 草間 朋子
    東京大学 医学部 放射線健康管理学教室

書誌事項

タイトル別名
  • The combind effects of Radiation and Ultrasound on ICR mouse embryos during Organogenesis stage

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抄録

放射線による胎児への影響の研究は, 比較的古くから行われており, 多くの科学的知見が明らかにされており, 放射線防護の領域に関する権威ある国際放射線防護委員会(ICRP : International Commission on Radiological Protection)を初め, 多くの国際機関および国のレベルでも胎児の放射線防護・安全の観点からの検討が積極的に行われている。これに対して超音波による胎児への影響については, 知見も不充分であり, 統一した基準の設定等に至っていない。特に, 胎児は, 成人や子供に比べ種々の環境要因に対して感受性が高く, 安全問題を考える場合には特に着目すべき個体である。超音波診断は, 妊娠の確定診断として大部分の妊婦に対して行われているのが実態である。超音波診断が行われる時期は, 器官形成期から胎児期まで広い時期にわたっている。現在, 臨床で用いられている超音波は一般に出力が弱く, また, 母親の腹壁および子宮腔によって減衰され, 約1/15程度になることから胎児に及ぼす害はないとされているが, そのピーク値が高いことを考えるとより慎重である必要がある。超音波の治療への利用も盛んに行われている。これらの治療用超音波は, 生体になんらかの影響を与えることが目的であるため, 超音波強度が強いという特徴がある。これらの超音波の物理的な要因による影響を防護・安全上の立場から検討する。環境要因の中の物理的因子である電離放射線と非電離放射線(超音波)に着目し, 胎児影響について検討した。放射線および超音波を用いた診断行為は, 現在の臨床医学においては欠かせないものであり, 放射線と超音波診断による胎児への影響は, 医療関係者だけでなく, 社会的にも注目されている。また, 現代の医療では, 数種の検査が併用して行われており, 放射線診断と超音波診断が併用される機会が多い。このような状況にあるにもかかわらず, 放射線と超音波を併用した場合の胎児影響に関する検討はほとんど行われていないのが現状である。本研究では, ICRマウスを用いて放射線単独照射群, 超音波単独照射群, 放射線と超音波の併用照射群に分けて実験を行った。放射線単独照射の際の胎児影響としては, コントロール-1における外表奇形の発生率は, 3.3%であるのに対し, 0.5 Gyでは10.1%であり, 有意差が認められ, 奇形のしきい線量は0.5 Gyより低い。超音波単独照射の際の胎児影響としては, 代表的な外表奇形である外脳症が, 0.5W/cm^2でも認められた。超音波と放射線の併用照射による胎児影響については, 明らかな相乗効果を示した。

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