<原著>ICRマウスの器官形成期において温熱が及ぼす奇形および胚死亡への影響

  • 具 然和
    鈴鹿医療科学技術大学 保健衛生学部 放射線技術科学科
  • 長谷川 武夫
    鈴鹿医療科学技術大学 保健衛生学部 放射線技術科学科
  • 草間 朋子
    東京大学 医学部 放射線健康管理学教室

書誌事項

タイトル別名
  • The Hyperthermia effects at organogenesis of ICR mouse on malformation and embryonic death.

この論文をさがす

抄録

胎児は, 成人や子供に対して様々な環境要因より, 感受性が高い。特に, 電離放射線に対する胎児の影響は, 明らかである。しかし, 非電離放射線に対する人体への影響は, 未だ明らかにされていない。また, 着床前期と器官形成期は, 妊婦自身が妊娠に気づかない時期でもあるので, 電離・非電離放射線の防護上, 最も重要な時期でもある。奇形と子宮内死亡のような生物学的効果は, 電離・非電離放射線の暴露によって明らかである。これらの胎児への影響は, 胚の発生時期によって感受性が異なる。つまり, 時期特異性がある。また, 胎児は, 着床前期, 器官生成期及び胎児期の3つのステージに分けられる。放射線による胎児影響については, 各時期によって詳しく研究がなされた。従って, 放射線に対する人体への影響つまり生物学的影響に対する防護はICRP(国際放射線防護委員会)および他の国際的委員会によって実際上安全基準が定められている。従来まで放射線によるマウスの器官形成期における胎児死亡や奇形は明らかであるが, しかし, hyperthermiaによる器官形成期の奇形や胚死亡の影響は, 明らかにされなかった。従って, 本研究は, hyperthermiaによる器官形成期の影響を検討した。本研究では, 日本で奇形実験としてよく用いられているICRマウスを用いて妊娠192 hpcに温熱処置を行った。温熱処置は, 37℃群, 38℃, 39℃, 40℃, 41℃, および42℃群に分けて10分間実験を行った。これらの結果, 器官形成期が胎児期より胚死亡の感受性が高いことが明らかになった。また, 奇形についても38.5℃以上で外脳症(exencephaly), 口蓋裂(cleft palate), 無眼球症(anophthalmia)のような外表奇形の様々な種類の奇形が生じた。しかし, 38℃以下においては, 奇形は, 観察されなかった。胎児体重については, ほとんど変化は, 観られなかった。今まで, 放射線や化学物質による胎児の感受性が高いとされてきたが, 同じくhyperthermiaにおいても同様な影響があるということが本研究により明らかにされた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ