<原著>硝酸薬持続投与時の過換気負荷による冠動脈収縮亢進

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抄録

硝酸薬の長期間持続投与は,必ずしも心事故抑制効果を得ず,むしろ増加させるという報告があり,機序の一つとして硝酸薬持続投与時の冠動脈過収縮反応が考えられている.過換気負荷は,冠動脈攣縮を引き起こす.そこで,本研究では,硝酸薬持続投与時の過換気負荷による冠動脈収縮反応を検討した.対象を左冠動脈に有意狭窄のない虚血性心疾患患者8例を選び,その年齢は62±4 (42歳〜74歳)(平均±標準誤差)であった.硝酸薬以外の内服は変更せずに心臓カテーテル検査を施行し,心臓カテーテル検査により左前下行枝に50%以上の狭窄を認めた症例は除外した.内訳は男性7例,女性1例,陳旧性心筋梗塞6例,労作性狭心症2例であった.硝酸薬非投与時と硝酸薬持続投与時の2回同一症例に心臓カテーテル検査を行った.心臓カテーテル検査の際に,過換気負荷試験(1分間に30回の換気を6分間)を行った.過換気負荷試験前後で,定量的冠動脈造影法にて左冠動脈前下行枝径を計測した.過換気負荷後の左冠動脈前下行枝収縮率は,全例で硝酸薬持続投与時で非投与時に比べ増大していた.seg-ment6では硝酸薬持続投与時平均15.1±2.4%,非投与時平均6.2±1.6%であり,segment 7 では,硝酸薬持続投与時平均18.5±3.5%,非投与時平均7.8±2.3%, segment 8 では,硝酸薬持続投与時平均17.8±3.0%,非投与時平均6.6±2.2%と,硝酸薬持続投与時では非投与時に比較して左前下行枝が有意に収縮していた(それぞれP<0.01).従って,陳旧性心筋梗塞における硝酸薬服用患者の心事故(再梗塞,心不全死,突然死)増加の一つとして硝酸薬持続投与時の冠動脈過収縮反応の関与が考えられた.

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