2-Amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)投与Donryuラットに誘発した拡張型心筋症 <原著>

DOI 機関リポジトリ 被引用文献1件 オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Cardiomyopathy in 2-Amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine (PhIP) Treated Donryu Rats

この論文をさがす

抄録

2-Amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)は加熱食品に由来するへテロサイクリックアミンであり, ラット大腸, 前立腺及び乳腺に対する強力な環境発癌物質の1つである。PhIPの75 mg/kg/dayを18週齢の雄Crj : Donryuラットに隔日10回強制経口投与した。52週の試験期間における死亡率が40%と, 対照群及び2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f]quinoxaline(MeIQx)群(20及び15%)に比べ高値を示した。この死亡例の75%が心肥大を示し, 拡張型心筋症の特徴を示していた。超微形態的に心筋細胞で筋原線維の減少, ミトコンドリア数の増加及び変性, 筋小胞体の拡張等が認められた。次に, PhIPの20,40及び75 mg/kg/dayを同様に投与し, 心臓の変化を経時的に検討した。試験期間中に40 mg/kg群の1例及び75 mg/kg群の4例が死亡し, 心臓重量は対照動物を含む生存例に比較して高値を示し, 心肥大を呈した。死亡例の75 mg/kg群の投与開始後4週から左心室の炎症性細胞浸潤, 心筋細胞の空胞化/壊死, 線維化が認められ, 投与開始後26週まで観察された。死亡例ではさらに心房内血栓形成や右心室拡張も認められた。40 mg/kg群では投与開始後4週に, 少数例で心筋細胞の空胞化がみられた。投与開始後26週以降に心筋細胞の変性/壊死, 炎症性細胞浸潤や線維化が認められた。超微形態的には筋原線維の減少, 筋小胞体の拡張, ミトコンドリア数の増加, 筋形質の腫脹が40 mg/kg以上の群で認められた。20 mg/kg群では4週後に, 炎症性細胞浸潤や心筋細胞の空胞化が少数例にみられた。投与開始4週後に投薬各群の血圧が一時的に有意な低値を示した。投与開始4週後にPhIP-DNA adductレベルの増加が用量依存的に認められたが, 投与開始13週後(75 mg/kg群)では低値を示した。以上から, PhIPの高用量投与によりDonryuラットにみられた心肥大を伴う死亡例の増加は, PhIPによる心筋障害に起因する拡張型心筋症に起因するものであり, その原因に心筋細胞におけるPhIP-DNA adductの形成が関与していると考えられた。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ