糖尿病患者における麻酔中の圧受容器反射機能

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抄録

糖尿病患者における自律神経障害に全身麻酔が与える影響を知るために,糖尿病を合併しない対照患者(C群)と自律神経症状を自覚しないインスリン非依存性糖尿病患者(DM群)について,麻酔導入前後で降圧試験(ニトログリセリン),昇圧試験(メトキサミン)による圧受容器反射感度(BRS)を比較検討した。麻酔導入はサイアミラールおよびベクロニウムで行い,維持にはイソフルレンまたはセボフルレン,笑気および酸素を用いた。また,覚醒時の簡便な自律神経機能評価として咳による心拍数の増加を両群で比較した。咳試験の心拍反応および導入前の降圧,昇圧両試験によるBRSはDM群がC群に比較し有意に低かった。導入後両試験のBRSは導入前に比較し両群ともに抑制され.DM群はC群に比較し有意に低く無反応に近い状態となった。サイアミラール投与および気管内挿管による平均動脈圧の変動はDM群が有意に大きかったのに対し,心拍数の変動は有意に少なかった。上記の指標にインフルレンとセボフルレンの間の差は見られなかった。以上より,糖尿病患者の自律神経機能の術前評価は症状の有無にかかわらず必須であり,咳試験は簡便で有用であることが確かめられた。また,糖尿病患者における自律神経障害が全身麻酔によりさらに悪化することが明らかとなり,周術期の突然の徐脈,低血圧,心呼吸停止の一因である可能性が示唆された。

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