僧帽弁狭窄症における呼吸筋機能の検討

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  • Clinical studies on the respiratory muscle function in mitral stenosis

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抄録

僧帽弁挟窄症における術前呼吸筋機能を評価し,肺機能や肺循環動態との関連性について検討した。また,僧帽弁置換術が呼吸筋機能に及ぼす影響や術後発生する横隔神経麻痺合併特の影響についても検討した。呼吸筋機能の評価は横隔膜と胸郭の動的変化をX線透視下で観察し,画像解析によって得られた横隔膜収縮率(以下DCR)肺野拡張率(以下LAER)により各気量分画ごとに検討した。正常対照群(C群) DCR_<MAX>が39.8±5.7%であるのに対し,僧帽弁挟窄症群(M群)の術前DCR_<MAX>は33.4±6.1%と著明に低下していた。また,LAER_<MAX>もC群の50.1±14.1%に比べ40.3±10.2%と有意に低かった。肺気量分画ごとの詳細な検討ではDCRとLAERの両者とも予備吸気量(以下IRV)の減少が特徴的で予備呼気量には差はなかった。DCR_<IRV>やLAER_<MAX>及びIRVが全肺血管抵抗(以下TPR)に逆相関を示した。すなわち僧帽弁挟窄症における呼吸筋機能の低下の主体は,肺高血圧と密接な関係があり,恐らく肺間質の変化による肺コンプライアンスの低下が横隔膜運動に負荷を与え横隔膜収縮率の低下につながっていると推定された。また胸郭を含む補助呼吸筋はこの横隔膜運動能の低下に対し代償的に働いていると考えられた。僧帽弁置換術後に呼吸筋機能は軽度ながら低下しており,手術による肺高血圧の改善がただちに呼吸筋機能の改善には反映されなかった。しかし,術後横隔神経麻輝が発生した症例では呼吸機能の低下は著しく,術後呼吸管理に難渋した。僧帽弁挟窄症における呼吸筋機能を検討した結果,術後肺合併症を予防するためには,肺循環の改善に期待するだけではなく術前の呼吸筋訓練も重要であること,また,術後横隔神経麻捧予防に一層の注意が必要であることが強調された。

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