「死ぬ権利」と医師による自殺幇助(第8回日本生命倫理学会年次大会セッション「安楽死」)

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タイトル別名
  • "Right to die"and physician-assisted suicde

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抄録

ホスピスや在宅ケアにおいて患者は、単に延命に始終する治療を拒否し、いかに死ぬかを自分の意志で選ぶことができるようになってきた。この目的のために「死ぬ権利」が、患者の自己決定権を根拠として導入された。しかし自己決定権の原型は、Mill JSが「自分自身、その身体とこころに対しては個人に主権がある」とした点にある。ここに新たな問題が生じてきた。もし「死ぬ権利」が「死の選択権」を意味するのならば、耐えがたい心理的苦痛から逃れたい者が、論理的に「自殺する権利」を主張できる可能性が生じたからである。そのような考えから「自殺する権利」が主張され、致命的薬物を使用し、あるいは「自殺マシーン」を用いて自殺幇助する医師が登場した。この論文では、「死ぬ権利」を持続的植物状態、末期状態、自殺の3つの臨床類型に分けて比較検討し、その構成概念と正当化論理の異同を論じ、「死ぬ権利」の現在的な定式化を試みた。結論的には、1)医療行為として主張される「自殺する権利」と個人への医療の不可侵性としての「死ぬ自由」を区別する必要性を示し、2)「死ぬ権利」を「死の選択権」としてではなくて、「死が切迫した状況下において疾病過程によって患者の主体消滅が不可避な場合に、死に方を選択する権利」と定式化して論じた。この定式化によって、安楽死と自殺幇助の間に想定すべき明確な差異について論じた。

収録刊行物

  • 生命倫理

    生命倫理 7 (1), 61-67, 1997

    日本生命倫理学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (11)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679462592512
  • NII論文ID
    110001237017
  • NII書誌ID
    AN10355291
  • DOI
    10.20593/jabedit.7.1_61
  • ISSN
    2189695X
    13434063
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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