「ロシア語数詞句とその統語構造」 : 数カテゴリーの問題について

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抄録

現代ロシア語において,数詞句内における名詞・形容詞の形態は〈数詞〉の表す数によって変化する。その変化を,数および格カテゴリーの観点からそれぞれの対立の様相を表にすると以下のようになる。(表)数詞句内における名詞・形容詞形態に関するカテゴリーの対立[table][table]数詞句内の名詞について,数カテゴリーと格カテゴリーの対立はそれぞれ2項対立であるが,それぞれの対立点がずれており,まとめて分類すれば結果的に3項対立となる。また,数詞句内の形容詞について,〈数詞〉と結合する名詞が女性であれば,数カテゴリーと格カテゴリーとの対立点をずらして,3項対立にしようとすることは随意的に可能ではある。また,名詞が男性・中性名詞であれば,数カテゴリーと格カテゴリーとの対立点がずれることはなく,2項対立に帰する。数詞句内におけるこの不完全な3項対立は,単数-少数-複数という数カテゴリーの顕在化ではないか。少数という数カテゴリーはコルベットCorbett G. G.らによって提示されているカテゴリーで,厳密にいくつの数を指すかは明白にしないが,主観的に少ないと感じられる数を指すという。この不完全な3項対立を,コルベットが展開している数カテゴリーの類型論に当てはめれば,以下の図のような2組の2項対立から成る3項の対立であるということができる。(図)ロシア語数詞句内の名詞の数カテゴリー体系[figure]数詞句内の形容詞形態に関する3項ないし2項の対立という選択は随意であるが,図中においてこの随意選択は少数と複数の分枝に架けられた弧で表現されている。

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