イギリス東部地域における1967年以降の穀作経営の変化 : 中断作物の視点から

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タイトル別名
  • Changes in Farming on Cereal Farms in the Eastern Counties of England since 1967 : From an Aspect of Break Crops
  • イギリス トウブ チイキ ニ オケル 1967ネン イコウ ノ コクサク ケイ

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抄録

イギリス東部の穀作経営をとりあげ, 中断作物を利用した穀物連作を含む穀作の集約化を伺った. 穀物と中断作物との交代のパターン(作付方式)は経済的な状況に対応して変化している. 1960年代から1970年代中頃にかけては小麦の作付が大きく伸びていったが, 穀作では大麦の連作が行われ, 中断作物としては飼料用のマメ類が中心であった. たまたま, 1973年にアメリカの大豆禁輸がおこり, これに対処するために油糧種子や蛋自作物に対して価格支持政策が取られるようになってからは, これらの作物が中断作物として作付が増加していった. 特にナタネは, 収益性の高い作物として70年代以降作付が急増し, 80年代には中断作物の中心となった. しかし, 価格が抑さえられるようになった1980年代後半以降, 収益面での有利性は低くなりつつある. 作付方式は, 1970年代中頃と1980年代中頃に転換点が見られる. 1970年代後半に入ると小麦を中心とする穀物連作が拡大し始め, 1980年代中頃になると収益性の低下を反映して穀物の作付率は低下し始め, それを補うようにナタネを中心とする中断作物の作付が増加している. 80年代に入ると, どの作物でも実質粗利益は低下しているが, 穀物よりも主な中断作物であるエンドウやナタネの方が低下の度合いが大きい. 従来, 中断作物は穀作の減収分を補うという意味を持っていたが, その収益性の低下は穀作経営の収益性を一層, 低下せしめている. また, GATTのウルグアイ・ラウンド合意によって, 穀物と中断作物の価格は, 国際的な価格水準にまで引き下げられることになった. そのため, 穀物と中断作物の収益性は低下せざるを得なくなっている. こうして, 穀作経営の単位面積あたりの収益性は低下しつつある. 80年代までは耕地面積を拡大することで経営を維持してきたが, 集約的な大規模経営に対しては環境保全の面から批判が加えられがちであり(景観や伝統的な生垣の保全など), また薬剤を多用する栽培方法も批判を受けている. 他方, 農産物の価格が低く抑さえられている現在では薬剤購入費の増加は経済的にも経営を苦しくするものとなっている. このような状況のもと, 穀作経営は, 今後, 穀物連作を継続する場合, 中断作物を活用した雑草防除や病害の抑制が諜題となる.

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