犬の汗腺の機能組織学研究 : IV. 薬物刺激によるeccrine汗腺の細胞学的変化および腺細胞内PAS陽性物質の定量的変動

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  • Functional histology of the sweat gland of the dog : IV. Cytological variation of PAS positive materials contained in the cytoplasm of the gland cells following the pharmacological stimuli
  • 犬の汗腺の機能組織学的研究-4-薬物刺激によるeccrine汗腺の細胞学的変化および腺細胞内PAS陽性物質の定量的変動
  • イヌ ノ カンセン ノ キノウ ソシキガクテキ ケンキュウ 4 ヤクブツ シゲキ ニ ヨル eccrine カンセン ノ サイボウガクテキ ヘンカ オヨビ セン サイボウ ナイ PAS ヨウセイ ブッシツ ノ テイリョウテキ ヘンドウ

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抄録

犬のeccrine汗腺が足裏肉球部に局在することは明らかであるが,それらの機能についてはまだ明らかにされていない.本研究は薬物刺激による同汗腺の細胞学的変化およびPAS陽性物質の細胞内変動を顕微分光測光法的に追及して,その生理機能を明らかにしようとこころみたものである.結果は次の通り. 1) 犬のeccrine汗腺はapocrine汗腺と同様にcholinergic agentsにもadrenergic agentsにも反応する.とくに前者に対する反応が鋭敏で,10^-12濃度ですでに発汗作用がみられる. 2) 発汗剤注射後の足裏肉球部皮膚表面では肉眼的にも容易に汗の分泌が認められ,人とは異なり皮膚小溝にそつて流出する. 3) 細胞学的変化も顕著で,とくにclear cell内ではacetylcholine注射により多くの分泌空胞の形成が観察される.そのほか,dark cell内においてもミトコンドリア,分泌顆粒およびPAS陽性物質の規則的な変動が観察される. 4) PAS陽性物質の細胞内変動を顕微分光測光法的に追及すると,発汗剤注射後の腺細胞の細胞学的変化に応じて顕著な変動を示す.Dark cell内粘液多糖類は発汗剤注射後一時的に増量し,2時間後に最小値を示すのに対して,clear cell内グリコーゲンは注射直後から急激に減少し,その2時間後にはやや回復現象がみられる.このようにdark cellとclear cellの2種腺細胞は形態学的にも細胞化学的にも明らかな相違が認められ,それぞれ独自の機能を有するものと推察する. 5) 犬のeccrine汗腺の生理機能は人のeccrine汗腺でみられる本来の体温調節機能とは多少異なり,かなり多量の粘液多糖類を分泌するが,それは皮膚表面の機械的および化学的損傷を防いだり,外界からの有害物質の侵入に対する防禦機能をたかめるためのものと推察する.

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