日常生活自立度の低い障害者の摂食・嚥下機能における咬合状態の影響

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タイトル別名
  • Effect of occlusal support on swallowing in patients with a low degree of independence in daily life

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抄録

摂食機能療法の依頼箋が処方された障害者を対象に摂食・嚥下障害の実態を調査するとともに,嚥下造影(VF)を用いて,その特徴を評価し,咬合状態の影響を検討した.対象は,わかくさ竜間リハビリテーション病院入院患者において,リハビリテーション前にVFを行った228名(男性124名,女性104名)と,そのなかでリハビリテーション後にVFを行った28名(男性19名,女性9名)とした.調査内容は,性別,年齢,原疾患,原疾患発症から入院までの期間,日常生活自立度,リハビリテーション期間(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,歯科医師および歯科衛生士のそれぞれによる期間),残存歯数,アイヒナーの分類に基づく咬合支持の状態,治療の状態である.VFは当病院で用いているプロトコールにしたがって行い,評価は先行期,準備期,口腔期,咽頭期の4期に分け,各評価項目について障害の程度により点数化し,各調査項目と障害の総点数の関連性(Kruskal-Wallis検定,Mann-Whitney検定,Fisherの直接確立計算法,有意水準5%)について検討した.その結果,1.平均年齢は76.1歳で70, 80歳代を合わせると約60%を占めた.2.原疾患は,脳血管障害が3/4以上を占め,そのなかでは脳梗塞が60%を占めた.3.原疾患発症から入院までの期間は300日以下の人が約80%を占めた.4.日常生活自立度ではランクCが3/4以上を占め,寝たきリ度の高い集団であった.5.各リハビリテーションの期間は平均3〜6か月であった.6.咬合状態として,平均残存歯数は11.8歯で,アイヒナーのクラスCが過半数を占め,咬合支持がなく,補綴処置を行っていない人が35.1%を占めた.7.先行期,口腔期では過半数の人が,準備期および咽頭期ではほとんどの人が障害を持っていた.8.各調査項目と摂食・嚥下機能の障害との関連性を調査したところ,関連していなかった.9.リハビリテーション後のVFの結果,摂食・嚥下障害が改善傾向にある人では先行期,準備期での障害が改善され,悪化傾向にある人では準備期の障害の悪化が共通して認められた. 10.残存歯数が多く,良好な咬合支持を持ち,ブリッジや義歯による治療を行っている人の方が,摂食・嚥下障害が改善傾向にあった.以上のことから,咬合状態が,摂食・嚥下のリハビリテーションを左右するので,歯科医師を始めとした医療スタッフが積極的に参加し,口腔機能の改善をはかることが重要であることが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 67 (1), 121-135, 2004

    大阪歯科学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (20)*注記

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