乳歯の歯根吸収に関する臨床的研究-オルソパントモグラムによる-

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  • Root Resorption in Primary Teeth Observed on Panoramic Radiographs

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抄録

日本人小児の乳歯歯根吸収段階の年齢を基準にした標準図表を作成するため, オルソパントモグラム11,167枚 (男児 : 5,759枚, 女児 : 5,408枚) を用いて, Fanningたちの判定基準を参考に, 乳歯の歯根吸収段階を3段階 (歯根1/4, 歯根1/2, 歯根3/4吸収) に分けて性別, 上下顎, 左右側および歯種別に調査した. その結果, 以下のことが分かった.<br> 1) 各乳歯における歯根吸収段階には, 男, 女児とも左右側歯間で差はなかった.<br> 2) 各乳歯における歯根吸収段階の平均年齢は, 男児より女児のほうが低かった.<br> 3) 各乳歯における歯根吸収段階の平均年齢は, 上顎歯より下顎歯のほうが低かった.<br> 4) 歯根1/4から3/4までの吸収期間は, 上顎では乳前歯部より乳臼歯部で長く, 下顎では乳前歯部より乳臼歯部のほうが短かった.<br> 5) 乳切歯および乳犬歯の吸収期間には, 上下顎歯間の差はなかったが, 乳臼歯部では, 上顎歯のほうが下顎歯より吸収期間は長かった.<br> 6) 各乳歯における吸収段階と, その乳歯に対応する後継永久歯の石灰化段階の関連をみると, a) 乳歯歯根1/4吸収期の平均年齢は上下顎犬歯を除いて, 各後継永久歯の歯冠完成期と歯根形成初期の間の平均年齢に対応していた. b) 乳歯歯根3/4吸収期の平均年齢は, 上下顎犬歯および下顎第二小臼歯を除いて, 各後継永久歯の歯根1/4形成期と歯根1/2形成期の間の平均年齢に対応していた.<br> 7) 以上の結果をもとに, 日本人小児の年齢を基準にした乳歯歯根吸収の標準図表を作成した.<br> この標準図表は, 乳歯の根管治療や咬合誘導などの日常の小児歯科臨床に有用な指針を与えるものである.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 53 (5), 429-449, 1990

    大阪歯科学会

被引用文献 (4)*注記

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