ニホンザル (Macaca fuscata fuscata) 舌乳頭の微細血管構築について

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タイトル別名
  • Microvascular architecture of the lingual papillae in the Japanese monkey (Macaca fuscata fuscata)

抄録

口腔領域諸器官の微細形態は食性・咀嚼様式・摂食方法によって多様性がみられ, とくに舌乳頭については著しい動物種差を認める. 著者らはニホンザル舌乳頭の微細血管鋳型を作製し, 走査電顕で立体的に微細血管構築を観察し, 舌乳頭の形態との相関について考察を試みた. 本研究は8頭の成ニホンザルを用い, 5頭については微細血管構築を観察するために, 脱血殺後, 両側総頚動脈からアクリル樹脂を注入した. 10%NaOHで軟組織を除去, 乾燥後, 金蒸着を行い, 走査電顕で観察を行った. 残り3頭は2.5%グルタール・アルデヒド溶液で灌流固定後, 細切し, 1%オスミウム酸溶液で後固定を行った. うち2頭は2N臭化ナトリウムによって舌背上皮を剥離し, t-ブチル・アルコールにより凍結乾燥後, 走査電顕で観察した. 残り1頭は超薄切片を作製し, 透過電顕で観察を行った. 舌深動脈から舌背に向かって派出された細動脈は固有舌筋に枝を派出しながら上行し, 舌腱膜を貫いて舌背粘膜固有層で, 細静脈とともに同一平面上に細動脈および細静脈網を形成していた. 動静脈吻合は舌尖部において少数認められたが, 舌体部と舌根部では認められなかった. この細動脈網から各乳頭に向かって毛細血管が派出され, 乳頭内に毛細血管ループまたは網を形成していた. 舌背での部位差の大きい糸状乳頭 (三井, 1990) は, 舌尖部では環状集合糸状乳頭となっていて, 毛細血管は乳頭基底部で5〜8本に分岐し, 各糸状乳頭内に1個の毛細血管ループが分布していた. その毛細血管の先端は口径が太く, 不規則であった. 舌体部糸状乳頭は単独の長円錐形で, 毛細血管は乳頭内を上行して乳頭内毛細血管網を形成して, その先端に背の高い毛細血管ループを認めた. 舌根部は集合糸状乳頭となっていて舌背の上皮隆起内に毛細血管網が形成され, その上面に集合している糸状乳頭に毛細血管ループが分布していた. 茸状乳頭は舌尖部では球状で, 乳頭内中央を上行する毛細血管は周囲へ放射状に分岐し, 上面と側面にループを形成し, 1例に配列していた. 舌体部茸状乳頭は円筒状で, 毛細血管は乳頭内を上行して乳頭内毛細血管網を形成し, 上面に背の高いループを認めた. 有郭乳頭では2または3本の動脈性毛細血管が乳頭内を上行し, 分岐を繰り返して球状の乳頭内毛細血管網を形成していた. 乳頭上面には規則正しい毛細血管ループを認めた. 葉状乳頭では細動・静脈は柱状の乳頭葉長軸に沿って走行し, 乳頭内に毛細血管を派出していた. 毛細血管ループは乳頭葉上面に4または5列前頭面に規則正しく配列していた. ニホンザル各舌乳頭の微細血管構築は, 微細形態と同様にそれぞれ特徴ある形態を呈していることが明らかになった. 神経乳頭に分布する乳頭内毛細血管網の基本的血管構築は, 側面の二次乳頭の発達していない部位では毛細血管網を形成しているので, 味蕾の存在と毛細血管網の網目とは相関性は認められなかった.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 55 (6), g35-g36, 1992

    大阪歯科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679186823424
  • NII論文ID
    110001723552
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.55.6_g35
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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