ラット下顎頭軟骨コラーゲンに及ぼすビタミンD欠乏飼料の影響(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of vitamin D-deficient diet on the rat condylar cartilage collagen

抄録

軟骨細胞外マトリックスの主要成分はII型コラーゲンである.近年, この分子種と微量のIX型およびXI型コラーゲンが架橋結合してコラーゲンネットワークを形成し組織構築に重要な役割を果たすことや, 肥大軟骨細胞によって合成されるX型コラーゲンが軟骨内骨化に関与することなどが明らかにされてきた.しかしながら, 下顎頭軟骨コラーゲンに関する知見はおもに免疫組織化学的手法によって得られたもので, 短鎖およびFACITコラーゲンについての生化学的検索はみられない.一方, ビタミンDは生体内で活性化され, カルシウム代謝や骨・軟骨の形成に関与することが知られているが, 最近, ビタミンDレセプターのノックアウトマウスを用いた研究から, その作用は胎生期でなく離乳後の発育成長期に不可欠であることが明らかにされた.そこで本研究では, ビタミンD欠乏飼料がラット下顎頭軟骨コラーゲンに及ぼす影響をII型, IX型およびX型コラーゲンに対する抗体を用いて生化学的および免疫組織化学的に検索した.実験には離乳直後の3週齢ラットを用い, ビタミンD欠乏飼料で飼育したグループを実験群, 通常の飼料で飼育したグループを対照群とした.13週齢の両群ラット下顎頭軟骨からグアニジン塩酸可溶性画分とグアニジン塩酸不溶性・ペプシン可溶化画分を分画した.両画分のコラーゲンを塩分別法で部分精製してウエスタンブロッティング法で解析したところ, 両群ともに, グアニジン塩酸可溶性画分にはIX型コラーゲンのみが, ペプシン可溶化画分にはII型, IX型およびX型コラーゲンが認められた.グアニジン塩酸可溶性分のIX型コラーゲンは対照群に比べて実験群の方が多いのに対し, ペプシン可溶化画分のIX型コラーゲンは対照群の方が多く, また, X型コラーゲンは実験群の方が多かった.このような結果は, ラット下顎頭軟骨においてIX型コラーゲンには2つの存在様式, すなわち, II型コラーゲンと架橋共有結合しているものと結合していないものがあり, 飼料中のビタミンD欠乏によって結合型IX型コラーゲンが減少し, 非結合型が増加したことを示している.次に, これらのコラーゲンの組織における局在と加齢変化を調べるために, 3, 9, 13および21週齢の下顎頭軟骨を対象に免疫組織化学的検索を行った.その結果, 両群ともにII型コラーゲンはおもに成熟細胞層と一部肥大軟骨細胞層に局在し, 加齢に伴う成熟軟骨細胞層の厚さの減少とともにII型コラーゲンの局在の厚さも減少した.加齢に伴う厚さの減少は対照群に比べて実験群では遅延傾向にあった.X型コラーゲンは肥大軟骨細胞層に局在し, 加齢に伴って肥大軟骨細胞層骨側に限局傾向を示した.この骨側への限局傾向も対照群に比べて実験群では遅延傾向にあった.IX型コラーゲンはおもにII型コラーゲンと同様に成熟細胞層と一部肥大軟骨細胞層が局在したが, II型コラーゲンの存在しない肥大軟骨細胞層骨側にも微弱な反応が認められ, 生化学的検索の結果を免疫組織化学的にも支持していた.以上の結果から, ビタミンD欠乏飼料は, ラット下顎頭軟骨コラーゲンの結合様式や局在に影響を与え, 軟骨内骨化の遅延を生じさせていることが明らかになった.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 63 (2), 68-69, 2000

    大阪歯科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679186037376
  • NII論文ID
    110001724195
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.63.2_68
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ