総義歯形態が下顔面部の軟組織形態に及ぼす影響について

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  • Influence of complete dentures on soft tissue in the lower facial region

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抄録

本研究の目的は, 補綴臨床における審美的な回復を客観的に評価するための基礎的な資料およびその指標を得ることであり, 総義歯形態が, 無歯顎者の下顔面の軟組織形態に及ぼす影響について分析した.被験者は, 機能性と審美性がともに十分満足されている上下顎総義歯を装着しているボランティアの無歯顎患者8名とした.現在使用している上下顎総義歯の複製義歯を複数製作し, 人口歯部およびフレンジ部をそれぞれ改変した計測用義歯および下顎義歯を改変して咬合高径を変化させた数種類の計測用咬合床を製作した.顔面計測は, 頭部をフランクフルト水平面を基準として固定し, 非接触高速3次元曲面形状測定装置を用いて行った.得られた3次元データを画像解析ソフトを用いて, 正貌においては口裂幅, 赤唇高および赤唇の表面積について, 側貌においては鼻唇角, 赤唇角および鼻オトガイ線いわゆるエステティックライン(E.line)について, 画像解析ソフトを用いて計測し, 分析した結果, 以下の結論を得た.1.義歯の装着状況とその形態を変化させた義歯による下顔面の軟組織変化量は, 下赤唇高, 上下赤唇角, 鼻唇角, 上下赤唇とE.line間距離において各義歯条件間に有意性が認められ, これらの項目が無歯顎者の下顔面軟組織サポートの指標として有用であることがわかった.そのサポートには, 下顎の義歯よりも上顎の義歯が大きく関与し, また, 上顎の義歯形態変化は, 両鼻翼間の上唇およびその上方部を中心に影響を与えていた.2.咬合高径を変化させた咬合床による下顔面の変化量は, 口裂幅, 上下赤唇高, 上下赤唇角および上下赤唇の表面積において各顎位間に有意性が認められ, 咬合高径の変化に対する指標となり得ることがわかった.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 64 (2), 58-59, 2001

    大阪歯科学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (33)*注記

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