処置法の相違が乳臼歯の生理的歯根吸収過程に及ぼす影響の臨床観察

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抄録

乳臼歯処置法の相違により生理的歯根吸収(以下,歯根吸収とする)状態,脱落時期,後継永久歯歯胚の石灰化状態および萌出時期などに影響を及ぼすことを把握する目的で本研究に着手した.その結果,乳臼歯歯根吸収状態,脱落時期および後継永久歯萌出時期については,歯冠修復群,生活歯髄切断群は,男児・女児ともに無処置群とほぼ同様であった.生活歯髄切断群の高年齢時処置群は,無処置群より平均年齢値が少し低かった.一方,抜歯群,感染根管治療群,麻酔抜髄群,生活歯髄切断群,歯冠修復群,無処置群の順に平均年齢値が低かった.また,高年齢期における感染根管治療群および抜歯群では,後継永久歯の萌出時期の平均年齢値は著しく低かった.そして,後継永久歯歯胚の石灰化状態ついては,各処置群において差は認められなかったが,感染根管治療と乳臼歯抜歯を施した場合,その直後一時的に石灰化段階が進む傾向が認められたが,その後の差は認められなくなかった.乳臼歯の処置年齢による影響は,高年齢時生活歯髄切断群,麻酔抜髄群および感染根管治療群では,乳臼歯の歯根吸収状態,脱落時期および後継永久歯の萌出時期が少し早くなった.また,乳臼歯抜歯時期の高年齢期,中年齢期,低年齢期の順に後継永久歯の萌出時期が早かった.また,低年齢時に乳臼歯を抜歯した場合,後継永久歯の萌出時期が少し遅くなり,高年齢時に抜歯すると早くなる傾向があった.一方,男児・女児間の差については,乳臼歯歯根吸収状態,脱落時期,後継永久歯の石灰化状態および萌出時期は,女児の方が男児より早かった.以上の結果から,乳臼歯の処置法の相違および施術年齢時により,乳臼歯の歯根吸収状態,脱落時期,後継永久歯歯胚の石灰化状態及び萌出時期に差異を生ずることが判明した.そしてこの研究結果から,乳臼歯の歯根吸収状態,脱落時期,後継永久歯歯胚の石灰化状態および萌出時期などを正しく導くには,健全乳歯に近い状態の処置法の範囲内におさめると伴により一層,リコールを徹底し,齲蝕予防に努めなければならないことが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 65 (2), 55-56, 2002

    大阪歯科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204208223872
  • NII論文ID
    110001724866
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.65.2_55
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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