トウガラシの無菌培養組織におけるミクロボディの存在について

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タイトル別名
  • Evidence for the Presence of Microbodies in Capsicum Callus Cultures
  • トウガラシの無菌培養組織におけるミクロボディの存在について〔英文〕
  • トウガラシ ノ ムキン バイヨウ ソシキ ニ オケル ミクロボディ ノ ソンザ

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抄録

メキシコ産トウガラシCapsicum annuum(品種Serrano)の下胚軸起源カルスを, 5%グルタルアルデヒドと4%ホルマリンで固定し, さらに2%オスミック酸で後固定した. 超薄切片を作成し酢酸ウラニルと鉛で二重染色し, Jeol 100 B型電子顕微鏡を用いて, その微細構造を観察した. トウガラシ細胞中に結晶構造をもった小顆粒を, しばしば観察することができた. この顆粒は一重膜によって囲まれており, 直径約600nmの球形の構造体である. ときには一部が伸長し, 尾をひいたような突起をもつことがある. また, この顆粒の近くに小胞体が存在する場合, および小胞体と連続しているように見える場合を, しばしば観察することができた. この顆粒に含まれている結晶構造のサブュニットは, 多数の線が並んだ縞模様に見える場合と, 縦横の縞がまじわっている構造を示す場合とがある. 前者の場合には, サブユニットが異なった平面で交差していると考えてよいと思う. 以上の観察から, ここで見られた小顆粒は, 植物および動物細胞で広く見いだすこどができるミクロボディであると言える. トウガラシ細胞中にはミクロボデイ以外に, ミトコンドリア・プロプラスチド・ゴルジ装置・脂質粒などの構造体を観察することができる. これらの各構造体の数の多少は, トウガラシカルス細胞の代謝活性の性質を反映していると思われるので, 観察した全構造体中における各構造体の比率を算出した. その結果, ミクロボディは, プロプラスチドおよびゴルジ装置と同じ割合で含まれていること, およびその比率はミトコンドリアの, およそ8分の1であることを明らかにすることができた. ミクロボディのタンパク質の約40%は, カタラーゼであることが知られている. またイネカルスからの茎葉形成過程において, カタラーゼ活性に変動が見られることが明らかにされている. したがって, トウガラシカルス細胞中に観察されたミクロボディの, 細胞分化にともなう変化を解明することは, カルスの脱分化, 再分化の機構を解析する上に, 重要な寄与をなしうるものと思われる

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