イネ科植物のクランツ型と非クランツ型の葉身における脂質顆粒の形成

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タイトル別名
  • Development of the lipid globules in grass leaves of Kranz and non-Kranz type anatomy.
  • イネ科植物のクランツ型と非クランツ型の葉身における脂質顆粒の形成〔英文〕
  • イネカ ショクブツ ノ クランツガタ ト ヒ クランツガタ ノ ヨウシン ニ

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抄録

イネ科植物のクランツ型構造と非クランツ型構造の葉身における脂質顆粒形成の差異を明らかにするため, 40種の葉身を光学顕微鏡で, 21種の葉身を電子顕微鏡でそれぞれ観察した. 1. 光顕観察によると, 非クランツ型葉身をもつすべての種で葉肉細胞と葉緑維管束鞘細胞の中に, 平均直径6μm以下のスダンIV染色性の脂質顆粒が検出された. しかし, ウィーピングラブグラスを除く種のクランツ型葉身においては直径0.5μm以上のスダン染色性の顆粒は検出されない (第1表). 2. クランツ型と非クランツ型の両葉身の葉肉細胞質内には直径0.5μm以下の電子密度の高い顆粒が電顕によって観察される. 非クランツ型葉身では, この小顆粒が互いに付着合体して大きな脂質顆粒に発達するものとみられるが, クランツ型葉身ではこの発達がみられない. 非クランツ型葉身の葉肉細胞内には大きな脂質顆粒と共に直径0.7~1.2μmのマイクロボディが存在するが, ウィーピングラブグラスを除く種のクランツ型葉身の葉肉細胞内ではマイクロボディが観察されなかった (第1~8図). 3. 非クランツ型葉構造のオーチャードグラスについて, 12月から翌年の5月まで毎月, 葉位別に脂質顆粒の直径を光顕で測定した. 抽出直後の葉身では脂質顆粒が険出されないが, 完全展開直後の葉身では脂質顆粒が急速に肥大し, 老化した下位葉では肥大速度が衰える. 1~3月の低温期に展開した葉身は他の時期に展開した葉身にくらべて脂質顆粒が小さい. また, 止葉を含む上位葉に多量に蓄積された脂質顆粒は登熟期においても減少しない (第9図). 4. これらの結果から, 光顕による脂質顆粒の検出は, イネ科のC3型とC4型の種を見わけるための補助的手段として用いることができるものと考えられる. また, 非クランツ型葉身の葉肉細胞内においては光呼吸に関与するマイクロボディが大きな脂質顆粒と共に存在することから, 脂質顆粒の形成には光呼吸が関係しているものとみられ, この顆粒の肥大速度は光合成活性と密接な関係があるものと推定される.

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