ピラゾレート除草剤によるミズガヤツリの光合成細胞内プラスチドの傷害

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抄録

水田雑草ミズガヤツリ(Cyperus serotinus)の葉肉細胞葉緑体は,発達したストロマチラコイドとグラナチラコイドをもち,クランツ葉緑体内には,多くのストロマチラコイドと辺周細網が認められる.両者の中間に位置するメストーム細胞は,厚い細胞壁をもつが,細胞質に乏しい.ピラゾール除草剤の活性物質であるDTPの低濃度処理で,光条件下クランツ葉緑体は正常であるが,葉肉葉緑体は変形する.しかし高濃度処理でも暗黒条件および短時間の光照射では,プラスチドに傷害が現れない.数日間の光照射でプラスチドの内膜系に著しい傷害が生じるが,包膜は正常である.暗黒条件におくと,中心格子の小管間の距離が40nmとなるエチオプラストが発達する.これに光を照射すると,中心格子構造からチラコイド前駆体が伸長し,末端から小胞が形成される.中心格子構造は多数の毛状体を形成し,最終的には基質が著しく薄くなり,チラコイドが小断片となり,外観的には白化現象を呈する.DTP処理葉細胞の核やミトコンドリアなどは,無処理のものと異ならない.以上の結果,DTPがチラコイド膜の崩壊を,暗黒条件でなく光条件下で引き起こすことを,透過型電子顕微鏡で明らかにした.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1572824501743349760
  • NII論文ID
    110001742443
  • NII書誌ID
    AN00189888
  • ISSN
    00111848
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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