子宮から農地へ : ガーナ南部のココア開拓移民社会における宗教実践の変容

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タイトル別名
  • From Wombs to Farm Lands : The Transformation of Religious Practices in a Cocoa Producing Migrant Society of Southern Ghana
  • シキュウ カラ ノウチ エ ガーナ ナンブ ノ ココア カイタク イミン シャカイ ニ オケル シュウキョウ ジッセン ノ ヘンヨウ

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抄録

本論は、ガーナ東部州アチェム(Akyem)地方のココア開拓社会における、19世紀末から21世紀にかけての社会経済変化と宗教実践の変容について検討する。ガーナ南部のアカン社会では、20世紀初頭から北部地域に起源をもつ精霊祭祀が勃興し、妖術対抗を主眼とした新たな宗教実践として急速に発展した。先行研究はこれらの精霊祭祀を「妖術対抗社(anti-witchcraft shrines)」と呼び、ココア生産の拡大と貨幣経済化に伴う社会不安への対処手段として説明してきた。しかし、妖術への対抗手段として20世紀初頭のアチェム地方を席捲した精霊祭祀のターゲットは現在、妖術から特定の呪術へと移行している。精霊祭祀の主要な「敵」の変更は、この地域における霊的な勢力図の変容を示すとともに、地域社会の政治経済的な地勢図の変化と連動している。すなわち、20世紀を通じての精霊祭祀の変容は、母系制アカン社会を基盤としたアチェム地方におけるココア生産の発展と移民の定住、これに伴う民族間関係の複雑化と土地をめぐる利害抗争の発生と深く結びついている。本論第2章では、ココア開拓の拡大期における妖術告発の増加と精霊祭祀の流行について、アチェム地方の母系制社会における親族政治に着眼して分析する。第3章では、同地域における精霊祭祀の現状を提示し、妖術告発の減少と特定民族と結びついた呪術問題の台頭を指摘する。また、ココア開拓社会を構成している民族間の関係を開拓以前の交渉史と現在の労働生産関係から分析し、多民族的な移民社会における民族間の境界の設定あるいは再創造と、呪術問題の勃興との関連を考察する。

収録刊行物

  • 民族學研究

    民族學研究 67 (4), 388-411, 2003

    日本文化人類学会

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